もっと知って欲しい!乳がんのこと②

もっと知って欲しい!乳がんのこと②

こんにちは。いい病院ネットです。

前回の『もっと知って欲しい!乳がんのこと①』に続き、今回はセルフチェックを行って、異常を見つけた後の流れ~乳がんの診断・治療までについてご説明したいと思います。

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『乳がんが疑われたら』

■セルフチェックのポイントは?

繰り返しになりますが、乳がんのセルフチェックをおこなう時期は、

〇生理が終わって1週間から10日の間で、乳房の張りがない時期
〇閉経後は、毎月1回程度の間隔で

が良いのですが、その方法としては

〇入浴時にチェックする
〇就寝前にチェックする

の2つを行うことがおススメです。

忙しくて1つだけにしたいときは、入浴時がおススメ。なぜかといえば、

・両方の乳房をゆっくり観察できる
・両手を動かして乳房を観察できる
・ソープを潤滑油がわりに使える

ことがあげられます。では、その方法について詳しく説明します。

●観察してチェック

裸になり、鏡の前に力を抜いて乳房を映します。
そして、両方の乳頭を含めた乳房の形・大きさ・高さ・皮膚の状態をチェックします。その時、正面だけでなく、横、斜めなどからも観察します。
特に乳頭については、色・形などに左右がないか、かさぶたや分泌物がないかをチェックし、乳頭を軽く押さえて乳汁などの分泌がないかを確認します。

次に、両手をゆっくりと上下して、乳房の皮膚にひきつれ、くぼみ、不自然な動きがないかを観察します。この時も、正面だけでなく、横、斜めなどからも観察します。

●触ってチェック

・入浴時に触ってチェックする方法
濡れた乳房を、ソープを軽く泡立てた4本の指の腹で、ゆっくりと円を描くように数回に乳房全体に触れ、しこりやこぶがないか確認します。そして、次に脇の下も、4本の指の腹で触り、しこりがないかをチェックしてください。

・寝る前に触ってチェックする方法
乳房が触れやすくなるように、肩の下に薄目のクッションやバスタオルを挿入。
調べる側の乳房の腕を頭側に上げ、乳房の内側を4本の指の腹でゆっくりと触ってしこりやこぶがないか確認、その後、乳房の外側を同じように触れて、乳房をチェックします。そして、上にあげていた腕を自然に下におろし、脇の下に触れ、しこりがないかをチェックします。

もちろん両方の乳房をチェックします。もし、乳頭にびらんや分泌物がある、乳房にしこりや皮膚に不自然なひきつれがある場合には、念のため病院を受診しましょう。

注意が必要なことは、200症以上の病院は、紹介状がないと、初診料のほかに「非紹介患者料」がかかる場合や、受診を断られる場合もあります。かかりつけ医に相談するか、ネットなどで「乳がん クリニック ○○市」などで検索すると、近くで乳腺を診察してくれるクリニックが見つかると思います。不安がらずに、まずは受診です。

■乳がんが疑われた時の流れは

まずは、乳腺そのものの検査を行います。

・医師による視診、触診
・マンモグラフィー検査
・乳房への超音波検査
・乳腺に対するMRI検査やCT検査 など

そして、それらの検査を行って、乳房に腫瘤がある場合には、その腫瘤ががんであるかどうかを検査する必要があります。

検査としては、針を刺して組織を吸引する「吸引細胞診」や、専用の針を使って組織をつまむ「針生検」、皮膚をメスで切開して組織を採取する「外科的生検」などを行い、組織を病理検査に提出し、病理診断の結果を待ちます。

そして、病理診断の結果で、「乳がん」と診断された場合には、周囲の臓器や骨や肺、脳などに転移がないかを、MRIやCT、PET-CTなどで全身検索を行い、病理結果で判明した乳がん細胞の特徴をもとに、治療計画を立てることになります。

患者さんのための乳癌診療ガイドライン:http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g2/q08/
がん情報サービス:乳がん:http://ganjoho.jp/public/cancer/breast/diagnosis.html

■乳がんの治療を決める要素とは

乳がんはしこりだけを切除すれば良いというがんではなく、がんの持つ特徴(顔つき)を知ったうえで治療を行わないと、再発する可能性が高まることが分かっています。そのため、がんの発生した病理学的組織分類(乳管がんなのか、小葉がんなのか)、がん細胞の腫瘍の大きさや、周囲のリンパ節などへの浸潤、他の臓器への転移を示す「TNM分類」によるステージ(病期)だけでなく、がん細胞の性質(顔つき)で分類する「サブタイプ分類」がとても重要になるといわれています。

さらに詳しく説明しますと、

・乳がんの病期は0期(非浸潤がん、パジェット病)から、他の臓器への転移がある4期までの5段階(細かく分類すると8つ)

・サブタイプ分類はルミナルA型・ルミナルB型(HER2陰性)・ルミナルB型(HER2陽性)・HER2型・トリプルネガティブの5つのタイプに分けられます。サブタイプを決める因子は、がん細胞に発現している「ホルモン受容体(女性ホルモンであるエストロゲン・プロゲステロン」「HER2遺伝子」「Ki67値」があります。この因子は、予後や治療方法に大きく影響し、手術方法を含めた治療選択を行う際の大切な指標になります。

ホルモン受容体が陽性の場合には、ホルモン療法も治療の選択肢になります。がん細胞の増殖にかかわるHER2遺伝子が陽性の場合には、この遺伝子の活動をブロックする「トラスツズマブ(ハーセプチン🄬)が効果を発揮します。ですが、トリプルネガティブタイプの乳がんタイプの場合には、現在は薬物療法としては抗がん剤を選択するしかないため、治療選択の幅が少なくなってしまうのです。

また、Ki67値というのは、「細胞が増殖する能力を表す」といわれるマーカーのことで、この数値が高いと、がんの悪性度が高く、再発の可能性が高まるといわれています。そのため、この数値が高い場合には、追加治療として抗がん剤を追加することが一般的です。ただ、このKi67値は、施設によって測定値にばらつがあるともいわれ、解釈に戸惑うこともあるようです。

このように、がんの広がりだけでなく、がん細胞の持つ性質が、その後の治療に大きく影響する乳がん。女性がかかるがんで一番多いがんでありながら、治療はオーダーメイドな部分が大きいのです。ですが、「同じ病気なのに、治療法が違う」「同じ時期に発病した私も、○○さんと同じような経過をたどるのではないか」と、患者さんやご家族の方は、知り合いに同じ病気の方がいるが故の不安を抱くこともあります。

次回は、治療選択時のポイントと、乳がんで行われている治療についてご説明します。よろしくお願いいたします。

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

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