もっと知って欲しい!乳がんのこと④

もっと知って欲しい!乳がんのこと④

こんにちは。いい病院ネットです。

乳がんと診断された場合には、年齢やステージにもよりますが、可能であれば腫瘍を外科的に切除する治療が選択されます。ですが、女性にとって乳房を切除することは、精神的ストレスにもなりますし、どう判断していいか迷うのではないでしょうか。

今回は、乳がんで行われる手術のことや、その後のセルフケアについてご説明します。

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『乳がんの手術とセルフケア』

■現在行われている乳がん手術とは

現在、乳がんの標準的な術式として行われているものとしては

〇乳房温存手術(乳房を部分的に切除して、がんを含めた周囲1~2cm程度の組織を取り除く方法)
〇乳房切除術(大胸筋・小胸筋は残して乳房を切除する方法)

になります。特に、少し乳房の形はゆがみますが、乳房を残せる「乳房温存手術」は、患者さんの生活の質を維持する術式として、日本では積極的に行われてきました。その背景としては、乳房再建に対する知識不足や、乳房再建が保険適応ではなかったこともありました。

ですが、最近では
〇乳房再建術の保険適応が拡大されたこと
〇乳房温存術は、放射線治療と行うことが標準治療であること
〇乳房温存術+放射線治療後は乳房再建ができないこと
〇アンジェリーナジョリーの影響

などにより、乳房温存術が適応な場合であっても、乳房切除+乳房再建術を選択する患者さんが増えてきました。

特に、単純乳房切除術と呼ばれる「乳房の皮膚と乳頭を残して、乳腺組織を取り除く手術」を希望する患者さんが増えているそうです。乳房温存術では、乳頭も切除されてしまうのに対し、自分の皮膚と乳頭を使用して乳房を再建できれば、より自然な乳房に見え、手術後のボディーイメージの変化が受け入れやすくなるのだと思います。

ですが単純乳房切除術は、がんの数やその距離、残した乳頭・乳輪の血流状態などによって希望した結果が得られないこともあります。がん治療はオーダーメード。少しでもよい乳房を残したいと希望しても、できない場合があるので十分に主治医と話し合い、場合によってはセカンドオピニオンを受けて自分にとって適切な手術方法を選択してください。

また

〇内視鏡手術
〇ラジオ派焼却療法
〇FUS(集束超音波療法)

などを行っている施設もあります。ですが、この治療については、最新治療としてTVなどで紹介されることもありますが、長期的視点での再発リスクなどのデータは不十分な状態です。

内視鏡手術は保険適応ですが、手術時間が長く、手術手技が確立したものとは言いきれないため、標準治療にはなっていません。ラジオ派焼却療法・FUS(集束超音波療法)に関しては、まだ臨床研究の段階で、保険適応ではなく自費診療になります。そのため、手術を担当する医師を十分に知って、「手術跡が小さい」「低侵襲」ということだけでなく、他のリスクを知った上で治療選択をしていただければと思います。

■乳がん手術で行われるセンチネルリンパ節生検とは

乳がんの細胞から、最初に転移するリンパ節のことを「センチネルリンパ節」と呼びます。そのリンパ節にがん細胞がなければ、それより患部から遠いリンパ節にはがん細胞がないことになるため、余計なリンパ節を切除しないで済むことになります。

このセンチネルリンパ節生検のエビデンス(根拠)がはっきりしなかった時期は、必要以上にリンパ節を切除したために、乳がんは治ったけれども、リンパ浮腫で患者さんの生活の質が低下していました。

現在は、基本的に早期がんであってもセンチネルリンパ節生検を行うことが多くなっています。基本的には、手術中にセンチネルリンパ節生検を行い、その場で顕微鏡検査などによってがん細胞が転移していないかを確認します。

転移がなければ、それ以上はリンパ節を切除する必要はなく、がんの摘出術のみで大丈夫という判断になります。ですが、乳がんが見つかった時にリンパ節転移をしている場合には意味がなく、センチネルリンパ節が見つからない場合もあるそうです。また、手術は石の技術によっても差があることは否めません。センチネルリンパ節が陰性という結果がでても、100%安全とは言い切れないことが歯がゆい部分です。

■手術後のセルフケア

手術を受けた後は、今までの生活が待っています。通院は、術後数年継続して行うことになりますが、患部の皮膚や患側の腕の変化などは、日頃のセルフチェックとセルフケアが大切になります。

〇創部のチェックをする

乳房の手術を行った後、自分の乳房を見ることができない方が多くおられます。セルフイメージの変化を直視することに戸惑いと不安が感じてしまうためです。ですが、創部の皮膚や傷の変化に気が付くのは、自分自身です。できれば、入院中に、一度看護師などと一緒に創部を見ておくことをお勧めします。誰かと一緒に見ることで、客観的に傷の状態を把握することができると思います。

〇患部のスキンケアは刺激を避ける

退院後はシャワーや入浴が可能になります。このとき、手術をした乳房は強くこすらずに、泡洗浄で優しく汚れを落とし、柔らかなタオルで抑え拭きするように心がけてください。手術のストレスに耐えたお肌は、刺激を少なく優しく扱うと同時に、入浴後はボディーローションなどで保湿に心がけてください。

〇術後のリハビリテーションを継続する

手術の翌日から病院のプログラムに合わせて、患側の腕や肩関節を上げる運動を行うことになります。リンパ節郭清を行った場合には、肩関節の運動を行うことで、肩関節が硬くなることを予防することになります。手術を行うと、必要上にかばってしまい、腕や肩を動かさなくなる患者さんもお見掛けします。できれば、退院後も、意識して、腕の挙上運動や、肩関節運動を、3か月以上は継続して行うことが大切です。

〇できる範囲から、今までの役割をこなす

手術後は、手術をした側の腕の筋力は低下してしまっています。そのため、物をつかんだり、運んだり、使ったりといった動作が、今までのようにはできなくなっていると思います。また、不意に動いて傷が痛むということもあると思います。

家族に迷惑をかけた、家で休んでいることが心苦しいと思う方も多いのですが、入院日数が短縮されたとは言え、心と体にとって手術は大きなストレスには違いありません。退院後は、無理せずに、家庭の役割をこなすように心がけてください。

「やれない」「できない」ことに目を向けるのではなく、「今日はここまでできた」ことを意識してほしいと思います。疲れと無理は、回復の妨げにもなりかねません。家族に手伝ってもらうことや、家事も一気に行うのではなく、休息を取り入れながら、徐々に活動する時間を増やすようにしてください。毎日の積み重ねが、何よりのリハビリになります。

〇仕事は長時間、患側に負担をかけない

患側に負担のかかる仕事は、長時間行わないように注意してください。重いものを持つ仕事などの場合には、職場の配置転換なども、上司と相談するとよいと思います。また、パソコンや運転などを行う時も、意識して休息をとるようにして、肩や腕を伸ばす運動を休息時に取り入れ、肩や腕の血流をよくするように心がけてください。

〇リンパ浮腫を予防する

リンパ郭清を行った患者さんだけでなく、センチネルリンパ節生検を行った場合でもリンパ浮腫が出現する場合があります。そのため、普段からセルフケアに心がけることが大切になります。

・虫刺されや、日焼けを避ける
・スキンケアは泡洗浄と、保湿クリームやローションで皮膚の角質を保護する
・きつい下着をつけない
・肥満を避ける
・寝るときにも、患側の腕を下にしないようにクッションなどで工夫する
・患側の肘にバッグを持つことや、指輪などをつけない
・血圧測定や採血も患側は避ける

ことなどに注意するようにします。ですが、大切なのは、「あれ?腫れぼったい?」ということに、気が付くことです。これは、毎日のスキンケアがあるからこそ気が付くことです。少しでも、手が腫れぼったい、いつも見えていた血管が見えない、腕がだるいなどの症状が出現した場合には、予約前であっても病院を受診して、主治医に相談するように心がけてください。

〇手術の痛みはゆっくりと良くなる

手術の傷は、日に日によくなっていきます。ですが、傷の内側の痛みは、寒い日に痛みが出たり、表面がピリピリした感覚が残っていたり、引きつれや違和感といった感覚が残ることがあります。その痛みや感覚も、徐々に軽くなるのですが、患者さんのお話を聞くと1年以上はかかることが多いようです。「古傷が痛む」という言葉があるように、手術で損傷された皮膚・筋肉・神経などの組織が完全に回復するまでには、時間が必要なのですね。

そのほか、下着などは、乳がん手術後専用ブラジャーなどが多数販売されています。乳がん患者さんが多い病院では、売店で購入できることが多いようです。

また、ネットでも購入可能です。
ワコールリマンマ:http://www.wacoal.jp/remamma/
下着の専門店アン:http://inner.in/?mode=cate&cbid=400523&csid=0

などがありますが、ほかにも色々なお店で販売しています。下着を選択する場合には、手術だけでなくその後の治療などを含めて、自分に合った下着を選択するようにすると良いようです。病院によっては、乳がん看護認定看護師も活動していますし、乳がん患者さんの患者会はどの地域でも盛んに活動しています。自分にとって、相談しやすい人やコミュニテーを見つけて、気兼ねなく相談してください。

次回は、放射線治療とセルフケアについてご説明します。よろしくお願いします。

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

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