もっと知って欲しい!乳がんのこと⑧

もっと知って欲しい!乳がんのこと⑧

こんにちは。いい病院ネットです。

抗がん剤治療の中に分類される分子標的薬治療も、全身治療の一つです。ですが、いわゆる殺細胞性作用の抗がん剤と違い、がん細胞表面にある特異的な分子をターゲットに対し攻撃するため、特有の有害事象が出現します。そのため、有害事象対策が後手に回ってしまうこともあります。今回は、分子標的薬治療とそのケアについて、ご説明していきます。

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『乳がんの分子標的薬とセルフケア』

■乳がんで使用されている分子標的薬とは

〇HER2たんぱくに効果がある分子標的薬

乳がんに使用されている主な分子標的薬といえば、がん細胞の表面にHER2たんぱくの発現がある場合に適応となるトラスツズマブ(ハーセプチン)です。約20~30%の乳がん患者さんがHER2陽性と言われています。

ハーセプチンが発売されるまで、HER2陽性乳がんの患者さんは予後が悪く再発しやすいタイプでした。ですが、ハーセプチンが使用開始となり、適切な時期に使用することで再発率を低下することが明らかになりました。

ハーセプチンは術前・術後に使用できる効果的なお薬ですが、それでも再発する患者さんもおられます。そのため、現在ほかにもHER2たんぱくに効果がる分子標的薬が使われています。ベルツズマブ(パージェタ)、ラパチニブ(タイケルブ)などがあります。ハーセプチンと組み合わせたり、ハーセプチン抵抗性の患者さんに使用することで、治療効果を示しています。

また、ハーセプチンにエムタンシン(DM1)という抗がん剤を結合させたトラスツズマブエムタンシン(カドサイラ)というお薬も使用されています。

ハーセプチンが思うように効果が期待できなくでも、新しいお薬や他のお薬を組み合わせることで治療効果が得られることも臨床試験で結果が出てきています。“効果がないからダメだ”と、あきらめずに、臨床試験などの情報を確認することも良いと思います。

〇他の分子標的薬

乳がんに対する分子標的薬といえば、ハーセプチンという印象が強いですが、HER2たんぱく以外を標的にしている分子標的薬も使用されています。

ベバシズマブ(アバスチン)もその一つです。がんが成長するためには、がんに栄養を送る血管を新しく作らなければならないため、がん細胞はVEGFというたんぱくを放出して血管に働きかけることが判っています。アバスチンは、このVEGFを攻撃・結合し、がんの栄養血管を作らせない作用があります。アバスチンは、当初切除不能・再発大腸がんに対して使用されていたお薬ですが、乳がんにも効果があることがわかり使用されています。

また、エベロリムス(アフィニトール)という分子標的薬も適応開始となっています。このお薬は、がん細胞の中にある分裂や増殖を促すmTORという分子を標的として、がん細胞の分裂を抑える作用があります。このお薬は、当初、再発腎がんに対して開発されたお薬ですが、現在は乳がん患者さんにも使用されるようになりました。

このように、分子標的薬の適応は拡大しており、乳がん患者さんにも次々と使用できる分子標的薬が増えています。

また、現在、多くの乳がん臨床試験が行なわれています。ご確認ください!

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■分子標的薬の有害事象に対するセルフケア

分子標的薬には、一般的は抗がん剤とは違う有害事象が出現することが分かっています。お薬によって出現する副作用は違いますが、ここでは、スキンケア・爪ケア・セルフチェックと中心にご説明します。

〇スキンケア

分子標的薬の中には、手足症候群(HFS)や皮疹が出現することがあります。スキンケアの基本は「保護・保湿・除圧」と言われています。皮膚への刺激をどれだけ少なくするか、皮膚表面にある角質をいかに正常に保つかがとても大切になります。

<入浴や洗顔でのポイントは>
・熱いシャワーを直接皮膚にかけない
・入浴やぬるめのお湯とし、手足がふやけるほどの長湯は避ける
・皮膚はこすらず、泡洗浄で優しく汚れを浮かす
・スクラブ入り洗浄剤は避ける
・洗浄剤は、自分の肌に合っているものを。皮脂を落としきることは避ける
・洗浄剤は皮膚に残さないように十分洗い流す(特に毛の生え際、顎の下や顔側面)
・皮膚の水分をふき取る場合は、柔らかいタオルで押し拭きすr

<皮膚の保護のポイントは>
・入浴や洗顔・手洗い後は、保湿クリームやローションで十分保湿を
・処方されたクリームや軟膏は適量を守る
・顔だけでなく手足、爪や爪周囲にも保湿クリームやローションを塗布
・食器洗いや洗濯干し時は手袋を着用する
・タオルや雑巾を絞る時も手袋をして、手の皮膚表面の摩擦を避ける
・夏と冬では空気の乾燥度合いが違うため、肌の状態に応じて化粧水やクリームを選ぶ
・化粧水やクリームを塗布するときも、こすらずパフを使用するなどして軽くなじませる
・足の保護のため、吸湿性のよい靴下を着用する
・季節を問わず、外出時は紫外線対策を行う
・通常使用する日焼け止めは、O/Wの容易に洗浄できるタイプのノンケミカル製品で
・通常使用する日焼け止めSHF15~30、PA++~+++程度の強さのもので

<除圧のポイントは>
・きつい靴やハイヒールを避け、一部の皮膚に強い圧迫がかからないようにする
・正座や長時間足を下げたままにしない
・外出時もこまめに靴を脱いで圧を下げる
・指同士が重なりあうことを避け、5本指の靴下などを使用する
・足の指を開く運動を取り入れる
・タコなど皮膚の一部が固くなっている部分にはしっかり軟膏を塗布する

スキンケアをしっかりと行うことで、皮膚トラブルが軽減することが分かっています。しかし、抗がん剤や分子標的薬を開始してしまうと、体調を維持することが中心となりひと手間必要なスキンケアを行うことがしんどくなることもあります。

そのため、治療することが決まった時点で開始して、治療を受ける前には、皮膚トラブルが発症しやすい皮膚状態とすることがおすすめです。

〇爪ケア

爪も分子標的薬や抗がん剤によって障害を受けやすい場所です。ですが、目立たないためにケアが行き届きにくい面があります。ですが、爪は手なら何かを持つたびに、足なら歩くたびに加重がかかる部分です。爪が痛い、爪がはがれることは、生活の質を下げることにもなりますので、ひと手間かけてほしいセルフケアです。

・深爪を避け、角を残してカットする
・爪や爪周囲にも保湿クリームを塗布
・ささくれなどを不用意に引っ張らない
・爪が割れやすくなったら、爪切りではなくこまめに爪やすりで長さを調整する
・爪表面を保護するため、爪保護用ベースコートを塗布する
・ネイルをとるための除光液を使用した場合には、手洗い後十分に保湿クリームを塗布
・足を含めた爪周囲の発赤に注意し、早めに医療者に相談する

などがあります。もろくなった爪自体を強くすることは難しいですが、爪の乾燥を防ぐことで爪のトラブルを減らすことができます。特にタイケルブ🄬で治療する方は、爪トラブルは皮膚障害を起こしやすいといわれています。入浴後には、手足の爪まで保湿クリームなどを十分塗りながら、爪周囲に赤みや圧痛がないかチェックしてトラブルを早めに発見知るように心がけてください。

〇セルフチェック

分子標的薬の副作用は、個人差が大きいのも特徴です。アバスチン🄬などは、血圧が高くなることが知られています。ですが、分子標的薬は有害事象が治療効果と連動している場合もあり、血圧上昇は降圧剤を服用して抑えることで治療継続することになります。

大切なのは、お薬を服用したことで起こった体調の変化を早めに見つけて対処することです

・朝の安静時に体温や血圧を測り記録する
・空咳などが続いていたら病院に連絡する
・爪や皮膚トラブルが起きたら、遠慮なく主治医や看護師に伝える
・こまめに手洗い・うがいを行う
・室内の環境に注意して、乾燥している場合は加湿器の使用やマスクを着用する

などを行います。お肌も口腔内も乾燥が苦手です。乾燥対策は自分自身で「あ、乾燥している」とチェックすることが、何よりも大切なセルフケアになります。自分の体にとって過ごしやすい環境とは何かを考え、無理のない範囲で毎日続けられるように心がけてほしいと思います。

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

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