がんのこと、もっと良く知ろう③ 「緩和ケア」とは

がんのこと、もっと良く知ろう③ 「緩和ケア」とは

こんにちは。いい病院ネットです。

緩和ケアって聞くと、今もまだまだ、治療ができなくなった時に受けるケアというイメージが抜けない「緩和ケア」。ですが、緩和ケアが目指す本質は、本当は違うのです。今回は、「緩和ケア」についてご説明をしたいと思います。

「緩和ケア」とは
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■早期からの介入が大切な「緩和ケア」

2002年にWHOは、緩和ケアとは、「生命を脅かす疾患による疾患によって生じる問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題・心理社会的問題・スピリチュアルな問題を早期に発見し、適切なアセスメントと対処を行うことによって、苦痛を予防し緩和することで、クオリティー・オブ・ライフ(QOL)を改善するアプローチ」である」と定義しています。

ここでのポイントは、「生命を脅かす疾患」であること、「患者とその家族」であること、「早期」ということです。

つまり、緩和ケアとは、がんに限らず、生命の危機があると告げられた患者・家族の方に早期から提供されるべきケアのことになります。

その中で、がんはテレビの影響や、日本人の死亡原因第1位であることから、早期発見されたとしても、がんと告知された時に気持ちが動揺し、生活基盤が揺らぐ気持ちを呼び起こす疾患として捉えることができます。

■告知のショックが大きいほど、緩和ケアは大切です

病名を告知された時、「頭が真っ白になった」「自分のこととして考えられなかった」と、告知時のことを振り返る方は多くおられます。

医師からの説明を、気丈に聞いておられるように見えた方でも、その後にお話をすると、断片的にしか話を覚えていないことが良くあります。

それは、医療者の側でも、普通に病名やその後の説明を聞いておられる患者さんに対して、「しっかりしている」と判断して、更に色々と説明してしまうことがあります。そのことが、更に患者さんを「しっかりしなくては!」と思わせてしまう一因かも知れません。

ですが、心がアップアップの時には、心の反応として、知らずに情報を選別したり、聞こえているけれど頭が受け入れることができなくなったりします。これは、心を守るための当たり前の反応です。

こんな時こそ、緩和ケアが必要になる時です。あなたの受け入れられない気持ちを受け止めて、一緒に今後の解決策を考えていくことも緩和ケアなのです。ここでの緩和ケアは、「心の苦痛を緩和することで生活の質を上げる」ことに役立ちます。

では、どこに相談すれば良いのか?ということですが、やはり告知のショックは「緩和ケア外来」で医師に相談するよりも、「がん相談支援センター」や、「がん看護相談室」などで看護師や心理系の職種に気持ちを話し、気持ちの整理をすることがおススメです。

■経済的不安を解消することも緩和ケアの一つです

病名を知らされて、治療や今後の事を説明される中で、頭をよぎることの一つに、治療費や仕事のことがあります。

「仕事よりも命」と考えて急がれる方もおられますし、「治療よりも生活」と考える方もおられます。これは、どちらがいけないということではなく、その方が持っている価値観によるところです。

がんは、長期戦の病気です。抗がん剤治療の種類によっては、毎月の医療費が数万円単位に継続してかかることもあります。その「心理社会的問題」を解決することも、緩和ケアに一つになります。

人は、心と体は連動しており、どちらとも安定することで、免疫力がアップするとともに、自分の意思で判断する力を取り戻していきます。そのためには、仕事や収入の不安がいつも心のどこかにあることは、心身にとっていい影響を与えないことになります。

仕事のコト、お金のコトが心配で、そのことをクリアしないと先に進めない時には、がん相談支援センターや医療相談室で、その気持ちを相談して下さい。今は、病院にも社会保険労務士と連携して対応していることもありますし、高額療養費について知ることだけでも生活の目安がついて先が見通すことができます。

■緩和ケアは、職種がチームを組むことで成り立ちます

病名を告知され、特に痛みなどの身体症状がないと、「緩和ケアが必要」と考えられないかも知れませんが、それは主治医からの身体的アプローチとしての「症状緩和」が今は必要ないと考えて欲しいと思います。

がん治療を行う主治医は、身体の専門家です。あなたの病気や苦痛の元となる体の原因を見極め治療することのプロです。

けれど、人は病気が良くなるだけでは、改善されない苦痛がたくさんあります。告知された時の心の痛み、家族の問題、仕事や社会生活を送る上での問題など、医師だけでは対応不能な問題が多くあります。

その不安が、不眠や食欲不振、腰痛や下痢、頭痛などの身体症状を引き起こしていることも多くあります。ですが、その一つひとつの症状は、検査所見と自覚症状の矛盾が起きやすく、患者さんの苦しみを上手に改善することが難しいため、そのことがきっかけで主治医との関係がぎくしゃくしてしまうことさえあります。

告知をされた後から不眠がある、食欲がない、落ち着かないなどの症状が起きた時は、主治医に解決方法を求めるだけでなく、看護師やがん相談支援センターなどにいる職種に相談してほしいと思います。必要に応じてカウンセリングなどを受けることで、気持が整理され自分の考えがまとまることもあります。

緩和ケアは、医療や福祉に関わる職種がチームを組んで、患者さんをサポートするコトで、患者さんの生活の質を高める最善の方法を考えていくアプローチです。

告知から治療を決断するまでの短期間しかないけれど、一番生活や心の基盤が揺らぎかけるこの時期に、緩和ケアを受けることが、その後の生活を見極める力が湧いてくることもありますし、後悔しない意思決定が行えるコトにとても役立ちます。

まとめ

いかがでしたか?緩和ケアは、がんと告知された時など心身の基盤が揺らぐ時ほど、必要なケアですし、多職種からのアプローチこそが効果的なことも多いケアです。心と体は連動していますし、人は社会で生活しています。

色々な役割を担う、あなたをサポーとするには、主治医だけでは難しいこともあります。また、心の痛みや生活の不安が解決することで、更に医師との関係が良好になることもあり、その後の治療がスムーズに進み始めることも良くあります。

あなたの病院にあるさまざまな窓口や、がん相談支援センター、患者会、NPOなどを上手に使って、効果的に心と体のサポートを受けて頂ければと思います。

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

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