こんにちは。いい病院ネットです。
今、お口の健康を保つことが、色々な意味で注目させています。在宅介護となり、人に会うことが少なくなると、入れ歯をしなくなったり、お口のケアに無頓着になる方がおられます。しかし、お口の清潔を保つことは、人間が本来持っている機能の維持にもつながります。在宅医療の一つである訪問歯科についてご説明します。
『訪問歯科を利用するには』
■口腔内のケアをすることの効果とは
口腔内のケアをすることは、感染症の予防になります。在宅介護で起こりやすい合併症の一つに誤嚥性肺炎があります。誤嚥性肺炎を起こしてしまうと、入院治療が必要になることが多く、このことがきっかけで日常生活を行う動作が低下し、歩けなくなってしまったり、食事がとれなくなってしまったりすることもあります。
口腔ケアを適切に行うことで、お口の中の細菌を効果的に減らすことができ、誤嚥性肺炎の発生率を40%減少させる効果があったという研究結果も報告されています。ということは、在宅介護を続けるためには、口腔ケアは不可欠なものということになりますよね。
また口腔ケアをすることは
〇唾液の分泌を促し、口腔内の自浄作用を高める
〇口腔内の乾燥予防
〇虫歯や歯石の予防
〇あごや顔の筋力の維持や向上
〇嚥下機能の維持や向上
〇口腔内の爽快感
〇味覚の保持
〇食生活の改善
〇食べる楽しみが増える
〇人とのコミュニケーションを楽しむ
などの効果があげられています。そして、その結果として、効果的に口から食事をとることにつながり、免疫力や抵抗力の向上や、体重や体力の増加、そして身体機能の回復へとつながります。また、口腔粘膜に定期的な刺激をすることは、脳への働きかけにもなり、表情が豊かになったり、意欲を取り戻したりといった変化もたらすことになります。在宅介護を続ける中で、介護を受ける人にとっても、介助をする側にとっても、口腔内の清潔を保持することはメリットが多いことが判ると思います。
■在宅で口腔ケアを受けるには
では、どうしたら訪問歯科や口腔ケアを受けることができるのでしょうか?
〇無料の「お口の健康相談」を受ける
日本訪問歯科協会では、ボランティア啓蒙活動の一環として、歯科医院への通院が難しい方を対象に、無料で「お口の健康相談」を行っているそうです。入れ歯が合わなくなっているがそのままにしている方や、口臭が気になる、食事に時間がかかるようになった、お口が開きにくくなったなど、以前と比べてお口に関する変化が気になった時に、利用することができます。ただ、相談だけになるので、具体的に何か治療をしてほしい、口腔ケアをしてもらいたい時には、医療保険と介護保険を利用しての対応になります。また、協会が担当していない地域もありますので、HPでご確認ください。
(一般社団法人日本訪問歯科協会)
〇治療を伴う場合には医療保険が適応されます
訪問歯科も医療保険が適応になります。訪問エリアが決まっているため、基本的に交通費などの費用負担はありません。治療や検査にかかる費用は、患者さんの歯の状態に応じて変化しますが、虫歯治療や入れ歯作成なども可能で、高額療法費制度も適応されます。歯医者さんは、家の近くにあるだけでなく、家の中でも歯科治療を行ってくれるようになったことは、本当に嬉しいことですよね。また、入れ歯などは、生活を知ったうえで作成した方が、より良い入れ歯を作ることができるとも言われています。在宅歯科診療だからこそできる利点もあるようですよ!
〇口腔ケアだけなら介護保険での対応も
治療が必要ではない、口腔ケアを定期的に行ってもらいたい時には、介護保険でも対応可能です。歯科医師の場合には月2回まで、歯科衛生士の場合には月4回までは、介護保険の範囲内で対応可能になります。介護保険を利用されている方は、担当のケアマネージャーなどに相談して、ケアプランを組んでもらうと良いと思います。他のサービスも大切ですが、口腔ケアを継続的に受けることは、長期的な視点に立つと感染症の発症や、歯周病を低下させることで糖尿病のコントロールを改善することもわかっています。在宅で過ごす時間を、「自分で食べる」「味覚を楽しむ」「コミュニケーションを図る」ことを維持できるとしたら、たとえ月1回でも、専門的な口腔ケアを定期的におこなってもらう意義は大きいのではないでしょうか。
■毎日の口腔ケアもしっかりと
歯科医や歯科衛生士による口腔ケアを在宅で受けることが可能になっても、毎日の口腔ケアが何よりも大切です。また、毎日の小さな変化に気が付くことができるのは、やはり介護を行う方の“何かいつもと違う”という感覚に勝るものはありません。
その介護力を更に効果的なものにするためにも、歯科衛生士が訪問した時には、口腔ケア方法や嚥下訓練などの方法を教えてもらいましょう。在宅医療の主役は、患者さんと介護者の方の両輪になります。医療者はサポーターとして上手に活用することが大切です。
また、家族のケアを嫌がる場合でも、専門家の指導を一緒に受けたことがきっかけで、介護がうまくいくこともあります。口腔ケアが行き届いていることは、介護を受ける方にとっても、自然に話すことが楽しくなります。やはり口臭がないこと、起きている時にきちんと入れ歯が入っていることは、羞恥心を感じることなく口を開けられることにつながります。口を開ければ、顎や頬の筋力を動かすことになり、唾液の分泌も盛んになります。口腔ケアは、介護をする方のケアが、大きな変化として見えることができるケアでもあります。上手に、専門家の力を借りて、効果的で毎日できる口腔ケアの方法も教えてもらって下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか?口腔ケアの有効性が、次々と研究結果として発表されてきています。在宅ケアには欠かせない、口腔ケア。上手に、専門家の技術と知恵を使って、患者さんが本来持っている口腔機能を維持・向上させて、在宅で過ごす時間を楽しいものにしていただけたらと思います。