こんにちは。いい病院ネットです。
高齢の方が増加していく中で、これから更に在宅介護をしなければ成り立たたない場合が増えてくると思います。介護離職が問題となり、老人介護施設も一時よりは増加傾向ではありますが、それだけでは在宅介護の問題がすべて解消するわけではありません。今回は、在宅で介護を続けることのイメージについてご説明したいと思います。
『在宅で介護をするイメージできていますか?』
■自宅での介護は一人で頑張れるものではありません
自宅での介護は、エンドレスな作業です。どんなに介護を必要としている方が大切で愛しい相手であっても、介護負担が大きい場合には、24時間・365日、相手の方を介護することは無理なことと考えたほうが良いと思います。
それは、介護する方にも十分な睡眠と、ストレスを解消する時間を作らないと、「介護をしたい」と思った気持ちが義務だけに変わり、介護したいと思った相手のことを「自分に負担を与える存在」になってしまいます。
介護を必要とする相手も年齢を重ねるともに、介護をする人も年齢を重ねていきます。介護をする人の残された時間と同じだけ、介護をする人の時間も失われてしまうことになり、介護をすることだけの人生になってしまうことさえあります。
介護を受ける方は、「そうしてもらいたい」と思う場合もあるでしょうし、負担を感じてもどうにもならない場合もあると思います。ですが、介護をする側は、やはり介護をしたい思いだけにとらわれず、自分のこれからの人生を含めて、介護を楽にする方法を、よりたくさん知っておくことが大切になります。
■必要ないときから、介護のイメージを持つ
私は看護師なので、患者さんの移動や排泄の援助をすることが身についていますが、健康な方は入院すら経験したことがないまま、介護問題に直面化する場合もあります。
そうなると、トイレをどうするか、ベッドはどうなのか、物品も人を移動させる方法もイメージができず、焦りまくり、無理な体勢で移動や排泄を介助して、「ああ、無理だ」と悲観してしまったり、腰を痛めてしまったりということは結構ある現実です。
「介護なんてずっと先のこと」と考えがちですが、本当にそうでしょうか。親、配偶者、子供、身内の方など、いつ何が起こるかは誰にでもわかりません。そのため、できれば「介護が必要になった時の参考に」という軽い気持ちで、市や市民活動などで開催される介護フェスタや、講習会などに一度参加してみてほしいと思います。
実際に目で見ることで、介護が将来必要になった時に、どの部屋にベッドを置くか、トイレはどうか、お金の問題はどうかを考えることができます。
また、将来自宅で誰かを介護する予定がある場合には、役所や福祉協議会、訪問診療や訪問看護ステーション、包括支援センターなどが、どこにあるのかを知っておくことも大切な準備になると思います。
ここで、役に立つのが、実は近所で介護経験をした方の情報です。何かの病気で退院する時には、退院支援の一環として、相談員からも色々な情報を提供されます。ですが、病院の職員は、地域のことをよく知っているとは限りません。できれば、近所の介護経験がある方がおられるのなら、色々な情報を得ておくことは、より地域とつながる情報になりますので役に立ちます。
■上手に色々な人、場所を使う
自宅で介護を始めると、色々な問題が生じてきます。特に気になる問題としては、介護を受ける方が、社会性が失われていくことです。“自宅にいるのだから当たり前”と思うかもしれませんが、“家の中がすべて”になり、家族以外の方に会いたがらなくなってしまったり、リハビリやショートステイに行きたがらなくなったりしてしまうと、介護する側にとって自由になれる時間が少なくなってしまいます。
介護をする人は、どうしても介護を受ける人の気持ちを大切にしがちです。「行きたくないなら」「嫌な思いをするぐらいなら」と考えてしまいますが、介護はエンドレス。介護をする側の休息をとることが、介護をし続けることの原動力にもなります。介護を受ける方が家族以外とつながる機会を減らさないように対応していくことが大切です。
とはいえ、なかなか身内同士は言い過ぎたり、遠慮しあったりしてしまうものです。そんな時は、上手にケアマネージャーや訪問医・看護師を活用すると良いと思います。専門家が説明することで、患者さんも受け入れやすくなりますし、多くの在宅の患者さんを見てきた経験から、対応も上手だと思います。自分たちの生活のことを含めて、ざっくばらんに相談し、患者さんが家族だけで介護する形にならないように介入してもらうと良いと思います。
また、ケアマネージャーに自分たちの希望をしっかりと伝えるようにします。ケアマネージャーは、医療に詳しいとは限らない場合もあり、希望するケアプランにならないこともあります。その場合にも、在宅医や訪問看護師などに相談してみるのも良いと思います。間に医療の専門家が入ることで、ケアマネージャーが見えなかった部分に気が付くことになり、結果としてより負担が少なく、効果的なケアプランで介護を続けることができると思います。
地域で働く専門職は、横のつながりが強く、色々と情報を持っています。役割が違う人に相談することに気兼ねしてしまう方が多いのですが、地域は病院と違って、セクショナリズムで判断するよりも、つながってみんなで看るという姿勢をとっています。それは、家族が一人で介護をしきれないように、在宅医も看護師もケアマネージャーも、患者さんを抱え込んで支援しきれないことがわかっているため、協働して一人の患者さんを支えようと考えています。気になることがあれば、職種を超えて相談してほしいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。誰かを介護することは、それまでの生活が一変することもありますし、自由に使えた時間とお金が使えなる場合もあります。そうなってからでは、行き詰ってしまう可能性が高くなります。
誰もが、介護をする時代が到来したと考え、介護に入る前から、物品や情報に触れ、在宅で介護するイメージを持って頂き、物・人・場所を上手に使って介護を抱えこまないように心がけてください。