がんのこと、もっと良く知ろう⑥ 「家族ががんになったら」

がんのこと、もっと良く知ろう⑥ 「家族ががんになったら」

こんにちは。いい病院ネットです。

日本人の二人に一人ががんにかかる時代です。家族の方ががんにかかることは、当たり前の時代になってきたとも言えます。ですが、いくらTVなどで「がんは二人に一人がかかる」という言葉を聞いたとしても、わがこととして考えるまでには、至らないものですよね。今回は、家族の誰かががんになった時の心構えについて説明します。

「家族ががんになったら」
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■まずは、本人の気持ちを聴く

家族ががんと診断された時の、ご家族の反応は様々です。本人以上に混乱してしまう方もおられますし、逆に無関心を装う方もいます。また、がんになった家族が、どの立場の方かによっても、家族に与える影響も違ってきます。

また、がんにかかられたご本人も、自分のことよりも家族の心配をされる方もおられますし、自分のために家族に負担を強いる場合もあります。これは、やはり「がん」という病気が持っているマイナスのイメージが強いために、それだけご本人や家族が、これからのことを考えた時に、気持ちが揺さぶられたためだと思います。

ですが、まずは、本人ががんと告げられて動揺しているときは、家族の方は一緒にその波にのまれない視点を持つことも大切です。家族の一大事に「わがこと」と捉え、一緒に動揺してしまうと、今度は、本人が気分の気持ちを吐き出せなくなることもありますし、更に不安が強まることもあります。

つい、「治療はどうするの?」「仕事は?」「治療費は大丈夫?」「○○には伝えたほうが良い?」など、家族の方が頭に浮かんだ心配を、口に出したくなりますが、ここは一息ぐっと飲み込んで、ご本人の気持ちに耳を傾けて頂けたらと思います。

■正確な情報を集める

がん治療は年々、進歩をしています。数年前とは、標準治療も変わっています。以前、前立腺がんで家族を亡くした方が、自分の夫が前立腺がんになった時に、「どうせ助からないから、治療はしないでください」と手術を断ってこられたことがありました。その方の家族の方も手術をしたけれど再発をして、痛みに苦しみ亡くなったため、「どうせ助からないなら手術をしても意味がない」と考えてしまったようです。

どうしても、テレビの影響や10数年から数年前に家族が受けたがんの治療の印象が残り、そのイメージからご家族の方が抜け出せなということが起こることがあります。それは、人は見えない不安に対して、自分の中にある経験から、解決策を探ろうとする傾向があるためです。

家族の方は、身内や周囲の人から、がんに関する情報を得ようとしがちですが、まずは身内や周囲の知り合いではなく、がん相談支援センターや、WEBから「がん情報サービス」などの正確な情報を得ることから始めて頂いたいと思います。

■患者さんと普段通りに過ごす

患者さんからよく聞く言葉の一つに、「腫物に触るように扱われた」「そんなに悪い病気なのかと逆に落ち込んだ」という言葉があります。家族の方としては、体調をおもんばかってのことなのですが、患者さんにとっては自分がいることで、家族が気を使っていると感じ、負担を覚えるという悪循環に陥ってしまいがちです。

がんの治療を通して、できないことが出てくることはありますが、それ以外は、今まで通りの生活を送るように心がけて頂けたらと思います。必要以上に、本人がやりたいことを我慢させたり、家族がやりたいことを我慢したりすることは避けてほしいと思います。

がんは、長い治療や観察が必要な慢性疾患として、考えることもできます。そのため、お互いに無理をしてしまうと、不満や負担が蓄積し、何かの折に爆発することにもなりかねません。

できれば、病気になったからといって、家族の普段の生活を急に変化させるのはなく、それぞれの家族の生活を大切にしながら、この機会に十分に話し合って、患者さんが生活の中で手伝ってほしいことは何か、家族が患者さんに担ってほしい役割はないかを話しあって頂きたいと思います。

家族だからといって、相手の体や細かな気持ちの変化を、すべて知ることはできません。話あって、言葉にして、理解をすることも、大切なことです。

■家族の方をサポートする人を見つける

がんは、日本人の死亡原因の第1位です。日本人の3人に1人がんで亡くなりと言われています。がんと告知された時には末期の状態である場合もありますし、10年以上闘病生活を続けた末に亡くなる場合など、その経緯や時間経過はさまざまです。

ですが、一つ言えることは、どんな経過をとっても、患者さんが病気と闘っている姿を支える家族の方は、心と体にストレスを抱えていることです。「家族は第2の患者さん」と言われるくらい、患者さんを支えるために心と体に負担をかけている方が多いのです。しかし、その疲労や負担を、「自分は健康なのだから」「自分が頑張らなければ」と、自分の中に押し込んでしまうため、体調を壊した時には予備力が少ない場合さえあります。

家族の方も、できるだけ気持ちを誰かに吐き出して頂きと思います。家庭の中で辛さを吐き出すことは難しいと思います。ですので、心を許せる友人や、がん相談支援センター、心療内科や家族ケアの外来を行っている場所を利用して、気持ちを言葉にしてください。

吐き出すことで、気持ちが楽になると同時に、自分では見えない解決策が、他の目から見た時に簡単に得られることもあります。

患者さんにとって、ご家族が、自分の病気のために無理をせず、笑って過ごす姿が、癒しにもなるのです。たとえ、起きられなくなっても、「家族の足音や笑い声、生活する音が聞きたい」と希望する患者さんも多いものなのです。

まとめ

がん患者さんが家族にいる方は、今後もさらに増えると予想されます。また、がんは、治療が可能な病気に変わりつつあります。ご家族も、自分の生活を大切にする気持ちを持ちながら、患者さんと普段の日常を過ごしてほしいと思います。

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

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