がんのこと、もっと良く知ろう⑪「抗がん剤中はセルフケアが大切」

がんのこと、もっと良く知ろう⑪「抗がん剤中はセルフケアが大切」

こんにちは。いい病院ネットです。

がん治療は手術・抗がん剤・放射線治療が3大治療と言われており、最近は抗がん剤を手術前に使用することも増えてきています。手術や放射線治療と比べ、長期間治療が必要になることもある抗がん剤は、セルフケアが大切になる治療でもあります。今回は、抗がん剤のセルフケアのことを中心に説明したと思います。

0811
「抗がん剤中はセルフケアが大切」

■治療サイクルと体調変化のサイクルを覚える

抗がん剤の多くは、2~3週間ごと繰り返す治療になります。分子標的薬でも、検査データを見ながら休薬を入れながら行うお薬が多くなります。

このサイクルは、お薬による副作用を回復させるための時間でもありますが、そのサイクルにうまく合わせることで、できないと思っていた外出や小旅行などの時間を作ることができます。

例えば、白血球などの低下は、治療後10~14日程度にピークを迎えることが多くなります。そして次の治療ができる手前の時期は、ある程度回復してきている時期と考えることができます。まずは、自分がどの時期に一番白血球が下がりやすく、どの程度で上昇してくるかを理解することをお勧めします。治療を継続すると、白血球の回復に時間がかかるようになることもありますが、それも想定内のこととも考えることができます。

そのサイクルに合わせて、人に会うことや家族イベントを計画することもできます。もちろん抗がん剤を行っている間は、“手洗いとうがい”は毎日こまめに行うことが大切です。ですが、白血球が回復傾向にある場合には、人に会って過ごすことや楽しい時間を作ることが、逆に免疫を上げることにもつながります。

どうしても治療中は、不安ばかりに気を取られがちですが、自分の体のサイクルを知ることが、不安の解消にもつながりますし、楽しいイベントの予定を入れる心の余裕につながります。

■時には、無理して食べないこともOK

吐き気についても、お薬による支持療法の進歩により、急性の吐き気でなく、遅延性の吐き気に対しても、対応が可能になってきています。しかし、吐き気の出現や程度は個人差が大きいため、セルフケアも大切になります。

お口から物を食べることは、毎日の活力になります。ですが“食べなければ”“栄養を取らなければ”という「べき」が強すぎると、逆に食べることがプレッシャーとなってしまい、吐き気を逆に誘発することもあります。

治療を行って数日は、“水分はとる”ことには心がけていただきたいですが、体が食事を欲していない時は、“食べたいものを食べたいだけ好きな時に食べる”スタイルがおすすめです。抗がん剤治療中に無理に食べたために、その食事を見るたけで嫌な気持ちになってしまう方も結構おられます。でも、それこそもったいないことですよね。

今は、栄養補助食もバラエティーに富んでいますし、抗がん剤による吐き気はなからず収まるものです。ご家族の方が心配して、栄養のある食事を作ってくれることが負担に思うときは、医療者をうまく利用して、“無理に食べなくて良いといわれた”と説明するとともに、ご家族の方にも抗がん剤中の過ごし方について医療者の説明を受けてもらうこともおすすめの方法です。

ただ、注意するポイントは

○水分が取れない時は、病院を受診する
○食べなくても舌を含めた口腔ケアはきちんと行う
○下痢や便秘には注意する

ことです。抗がん剤治療を乗り越えるだけで精一杯になることもありますが、大切なことは抗がん剤治療を耐えることではなく、うまく治療と付き合うことです。抗がん剤を行うことで起こる体調の変化を、自分自身が把握し、その対処方法を周囲の人の力を借りてより良い方法を考えることが、とても大切です。

■スキンケアは、毎日の積み重ね

抗がん剤にはたくさんの種類があります。そのため、必ずしも吐き気や脱毛が強くないお薬もありますが、どのお薬にも大切なセルフケアに、スキンケアがあることは、意外に知られていないと思います。どうしても、すぐに命にかかわる副作用でないために、そのままスルーしてしまうことが多いように思います。

ですが、スキンケアをきちんと行うことが、自分の体をチェックする習慣にもつながりますし、毎日の積み重ねが皮膚の新陳代謝を正常化し、抗がん剤による色素沈着やシミを予防することにもつながります。

スキンケアは、実は副作用が出現してからでは、対処がしにくい副作用の1つです。それはターンオーバーと呼ばれる皮膚や粘膜が生まれ変わる期間が影響するためです。皮膚は約28日サイクルで生まれ変わるといわれています。

そのため、抗がん剤による副作用を受ける前から、

○皮膚のトラブルを回復させる
○抗がん剤で障害を受けた細胞を早く回復する

ために、毎日のスキンケアが大切になります。しかし、抗がん剤の副作用が出現してから、毎日の習慣としてスキンケアを身に付けることはストレスに思いがちです。そのため、抗がん剤治療をすることが決まった時から、毎日のスキンケアを行うことがおすすめです。

毎日のスキンケアとしては

○熱いシャワーを浴びない
○ナイロンタオルを使わない
○タオルで体をごしごしこすらない
○顔も体も泡洗浄で
○爪を含めた皮膚の保湿を心がける
○爪を短く切りすぎない
○体に跡が付く服を長時間着ることを避ける
○紫外線対策、虫刺され対策を行う

などがあります。抗がん剤を使用することで、どうしても健康な状態よりも皮膚や爪の機能が低下します。だからこそ、不足しがちな部分をセルフケアで補うことが大切になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。抗がん剤の副作用に関するセルフケアについては、まだまだお伝えしたいこともあります。次回も引き続き、「セルフケア」の視点からご説明できればと思っています。よろしくお願いします。

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>