がんのこと、もっと良く知ろう⑮「臨床試験ってなに?」

がんのこと、もっと良く知ろう⑮「臨床試験ってなに?」

こんにちは。いい病院ネットです。

がんの治療薬は、次々と新薬が発売されています。その前に必ず行われている臨床研究の一つに臨床試験があります。

肺がんに対する治療効果と費用対効果がTVなどでも取りざたされている免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(オブジーボ🄬)。今、実は様々ながん腫に対して臨床試験が行われていることをご存じですか?

仕組みが判りにくく、「試験」という言葉で惑わされがちな臨床試験について、ご説明したいと思います。

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「臨床試験ってなに?」

■そもそも臨床試験は何のために行われるのですか?

例えば、乳がんと診断され、病状の進行具合とがん細胞の特徴が分かった場合には、「乳癌診療ガイドライン」に沿って現在国内での最良の治療と行われるものが、「標準治療」になります。この標準治療は、科学的根拠に基づいて評価された治療で、おススメできる治療法です。

ですが、つねに医療は進歩し、新しい薬剤や治療器具、治療方法が開発されています。この「最新の治療」は、当たり前ですが、効果は期待できるかもしれませんが、安全性や有効性がはっきりしていません。そのため、その安全性や有効性のデータを得なければ、国(厚生労働省)から許可を得ることができないため、誰もが使える治療にはならないことになります。

そのため、安全性や有効性を客観的に評価するために行われる試験が「臨床試験」となります。臨床試験は、臨床で行われている医学研究の一つで、いわゆる「治験」は、臨床試験の一つに位置付けされています。

「治験」とは、
〇新薬を開発した製薬会社からの依頼で、厚生労働省の認可を得るために行う試験
〇医師が主導となって、医療器具や国内未承認薬、適応外使用の薬剤・器具を計画して行う試験

の2つがあるといわれています。

一般的に言われる「治験」の多くは、製薬会社が開発した薬剤などの安全性・有効性を証明するものを指しますが、「医師主導治験」は、症例数の少ない疾患を対象に行ったり、国内未承認の薬剤承認や機材に対するものであったりと、「治験」と一言でいってもかなり意味合いが違う場合もあります。

まれに、「臨床試験=実験台にされる」という印象を抱く方がおられますが、まずは、その内容を理解してからでも遅くないと思います。

■臨床試験を受けると、良いことはありますか?

臨床試験は、今の治療を超えるさらに良い治療法を見つける意味合いが強いため、臨床試験を受ける方すべてにとってメリットがあるとは言えない面もあります。

臨床試験を受けるメリットは

○最新のお薬などを無料で受けることができる
〇臨床の評価で必要となる検査は無料で受けることができる
〇途中で試験をやめる権利が保障される

ことなどがあげられます。

臨床試験を受けるデメリットは

〇必ずしも受けたい治療に振り分けられるわけではない
〇治療スケジュールや検査などがあらかじめ決められ自由度が少ない
〇思いもよらない有害事象が出現することもある

などがあります。

標準治療では治療効果が低い方や、そもそも希少がんで標準治療がないがんにかかってしまった場合に、希望を託して臨床試験を受ける時は、『必ずしも受けたい治療に振り分けられるとは限らない』ことを念頭に入れておくことが大切な心構えになりそうですね。

■試験に種類はありますか?

製薬会社が新しい治療を開発した場合には、3段階の試験を経た上で、その薬剤の安全性・有効性が認められた場合に初めて、厚生労働省の認可が下りることが一般的な流れになります。

〇第Ⅰ相試験(フェーズ1)
お薬の安全性や有効性を確認する試験で、がん腫は特定せずに少人数の患者さんに行う試験です。初めて人に投与する試験となるため、投与量も段階的に慎重に増やしていきます。
この第1相試験は毒性が強く出現した場合には、そこで中止となり、新しいお薬が開発されても、この試験で消えていくお薬も多くあるようです。

〇第2相試験(フェーズ2)
第Ⅰ相試験で確認された投与量や投与方法を、がんの種類や、病態を特定して行う試験で、第Ⅰ相試験よりも多くの患者さんが参加できる試験です。ただし、がんの種類によっては安全性や有効性が低くなることもあることを心得ておく必要があります。

〇第3相試験(フェーズ3)
比較試験といわれる試験です。新しい薬剤と、今までの標準治療とを比較させて、その有効性や安全性が、今までの薬剤よりも有効かどうかを確認していきます。多くの患者さんが参加できる試験のため、提示された条件にマッチングすれば、臨床試験に参加できる可能性が高まります。ですが、どちらの治療に振り分けられるのかはわからないため、新しい治療に振り分けられなかったとしても治験を受ける意思が必要になります。

第3相試験が終了し、その薬剤などの有効性や安全性が確認されれば、厚生労働省の認可を受けて臨床で使用できるようになります。そのため、第3相試験と呼ばれる段階にある治験は、数年後は標準治療になっている可能性もある治療です。治療をどこまで受けるのかを決めるのは、ご本人の考え方次第ですし、標準治療が安心と思う方もいれば、チャンスがあればどんな治療でも試してみたいと思う方もいます。また、治療法が限られたときに、治験を受けたいと思う方もいます。

臨床試験について詳しいHPはこちら
がん情報サービス・「臨床試験について」

オンコロ

厚生労働省・「治験等情報」

などがあります。

どんな臨床試験が行われているのか、わかりやすいのは「オンコロ」ですが、細かな臨床試験の仕組みについて説明しているのは、「がん情報サービス」です。自分だけに限らず、家族や大切の人が選択するかもしれない臨床試験のこと、興味を持っていただければと思います。

まとめ

臨床試験は、新しい治療を受けたいと望む患者さんの希望であるとともに、未来の標準治療につながる試験です。参加条件もあり、臨床試験を希望しても参加できないこともありますし、希望した治療に振り分けられないこともあります。

ですが、「治験=実験台=絶対嫌!」と考えるのではなく、そのシステムを理解してから考えることをおススメします。

がん相談支援センターなどでも、臨床試験についての説明を受けることができますので、もっと詳しく知りたいときは、お気軽にご相談ください!

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

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