在宅医療のこと、もっとよく知ろう!⑪

在宅医療のこと、もっとよく知ろう!⑪

こんにちは。いい病院ネットです。

毎日暑い日が続いていますが、高齢の方の過ごすお部屋の温度や湿度は大丈夫ですか?在宅で高齢者の方をケアするときは、この暑さはとても注意が必要になります。“暑そうにしていない”、“動かないから、汗もかかないだろう”そんな思い込みで気が付くと体液のバランスを崩してしまうことにもなりがちです。夏場の高齢者の在宅ケアで心がけたいことについてご説明します。

『高齢者の在宅ケアで心がけることは?』
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■暑さに鈍感、そして汗腺の活動も低下しがち

高齢になると、代謝が低下し、手足だけが冷えたり、汗をかかなくなったりと、体温調節機構がうまく働かなくなりがちです。特に、在宅で同じ部屋で過ごしている高齢の方は、気候の変化にも気が付きにくく、気温や湿度が上昇することの心構えも不足しがちになります。

そのため、本人は、部屋の温度や湿度、そして着るものに関していつも通りの感覚で対応してしまうことになります。そうしている間に、体に熱がこもってしまったり、上手に水分をとって汗をかくことせず、簡単に熱中症や脱水をおこすことになります。

高齢者をケアする方は、
○暑さに鈍感
○季節感が鈍い
○代謝が落ちているため、体温調整力が低下している

ことを念頭に置いて、暑さ対策を行っていただきたいと思います。なかなか、高齢の方は、“変える”ことが苦手な面もありますが、季節感を常に意識できるような環境を作ることを心掛け、自然と高齢の方が暑さ対策を受け入れやすいように心がけていただけたらと思います。

また、暑いときはクーラーを積極的に使用して頂きたいですが、クーラーの中だけにいると、体が冷え切ってしまうこともありますし、発汗することがなくなってしまいがちです。外気や入浴などを上手に取り入れ、汗をかく刺激も、上手に取り入れて頂きたいと思います。

■水分は時間を決めて上手にとる

脱水が怖いといって、できるだけ水分を取ってもらいたいのに、水分を取ってくれない高齢の方も多いと思います。そんな時は、生活の中で、上手に水分をとる時間を決めていくことも良いと思います。

例えば、好きなテレビを見る時間に合わせてお茶を持っていく、飲み物の種類を変えてみる、お薬の時にしっかりと飲んでもらう、孫の力を借りて声をかけてもらうなどです。

「水分を取って!」と言われても、自分ではうまく行動に移せず、億劫になりがちなことも高齢者の特徴の一つです。ポットやペットボトルを身近に置いても、上手にフタを開けることができない場合もあります。

生活のリズムに合わせて水分を取ってもらうタイミングを考え、上手に水分をとれる方法が見つかると、ケアする側も「水分を取りなさいって言っているでしょ?」とイライラせずに済むことにもつながります。

■排便や排尿の変化に注意して

夏は体調を崩しやすく、排便・排尿コントロールが崩れ、そのためにお薬が追加になることもあります。また、食事量が落ちたり、食事内容ものど越しの良いものになり、摂取カロリーが十分にとれていない場合もあります。

脱水は、体の「IN―OUT」バランスが崩れることで起こります。

下剤を服用して、水様便が多量に排泄された、利尿剤を変更して排尿量が増えた。一見、便秘が解消し、排尿困難が解決されたように感じる状態でも、そこに暑さや食事量の低下が重なると、簡単に脱水に傾くことになります。

夏は、排便は排尿量の変化や、摂取カロリーがどうか確認し、「IN<OUT」になっていないか注意して頂きたいと思います。高齢になると、細胞や組織が含んでいる水分量も低下しており、予備力がないため、排便や排尿の変化だけでも簡単に脱水になります。

お薬などを追加した後で、体から排泄される水分が多く、本人に活気がないと感じた場合は、“もう少し様子をみよう”と考えず、かかりつけに相談することをお勧めします。軽い変化の段階で対処することが、望まない入院や介護負担を予防することにもつながります。

■在宅でも点滴は可能です

在宅でも、採血や点滴は可能です。高齢者の方は、入院することで、脱水は改善できても、ストレスでせん妄を起こすリスクも高まります。

できるだけ脱水を起こさないように、環境を整えたり、「IN―OUT」バランスを保つことを心がけてほしいと思いますが、最近の夏の暑さはしのぎ切れないこともあります。

食事量が減ってきている、水分が十分に取れない場合には、かかりつけ医に相談して採血で体に水分が足りているかなどをチェックしてもらうことも良いと思います。だるさが、慢性的な水分不足からくる場合もありえます。

そして、必要に応じて自宅で点滴を行うこともできます。医師や看護師がずっと付き添っていることはできませんが、数時間で済む場合がほとんどなため、家族の方が病院にいた時のように本人が痛がったり嫌がったりしたら、医師や看護師に連絡をしてもらうことで十分対応できます。軽い脱水であれば、数回の点滴で体調を戻すことも可能な場合が多いです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。最近の夏の暑さは、誰もが堪えるしんどさです。そのしんどさに耐えうる予備力は、十分な体力がない高齢者の方は持ち合わせていない可能性が高いと思います。

その高齢者をケアするご家族の方は、季節の変化に気づく環境を整える、生活の中で水分をとる工夫をする、IN―OUTバランスの変化に注意する、などを心がけて頂ければと思います。そして、反応が鈍い、活気がないなど“いつもと違う”と感じた時には、遠慮なくかかりつけ医や訪問看護師に相談してください。早めの対処が、何よりも大切です。

ライター:村松まみ

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