こんにちは。いい病院ネットです。
最近、「家族が家で介護すると決めたのに、主治医が『大変だから他の病院を紹介する』と反対されたんです」と、主治医の意図が分からず悩んでしまった家族の方とお会いいしました。
在宅看取りの数は以前より増えましたが、それでも「病院のほうが良いのではないか」と思わぬ反対を受ける場合があります。
大切な家族を、住みなれた家で最期まで過ごさせてあげたい…そんな思いを実現するために、在宅ケアに反対された時の対処法についてご説明します。
■反対は、相手の価値観や経験でのアドバイスと聞き流す
在宅医療が広がりつつあったとしても、治療の場は病院です。多くの医師は、病院勤務の視点で、在宅医療を見ることしかできていないのが現状です。そのため、
〇在宅医の知り合いが少ない
〇自分の患者を在宅医に依頼した時に、良い結果にならなかった
〇在宅医に依頼しても、専門的処置は結局自分が対応する
〇そもそも、今まで在宅医に依頼したことがない
〇急に救急車で運ばれることを避けたい
などの思いが医師の頭をよぎります。特に、専門性の高い診療科であればあるほど、処置や救急対応は結局自分が対応することになるため、在宅看取りに慎重になる医師もいます。
また、経験値が低い医師は、自分の価値観で判断するしかないため、「病院での最期」を勧める傾向があります。そのため、緩和ケア病棟や知り合いの医師などがいる病院に転院することを勧めたがるのです。
ですが、それは主治医の価値観であり、経験値による発言ですので、一つの「アドバイス」として受け止め、「お家に帰る」準備を進めていきましょう。
■相談員や在宅医などの周囲を固める
家族が家で看取る決心がついている場合には、積極的に周囲の地固めを進めて欲しいと思います。
〇相談室の利用、退院調整看護師への相談
病院には、相談室や退院調整部門があります。患者さんの病状が安定し始めたら、相談室や退院調整部門を訪問して、「家で過ごさせたい」希望をご家族自ら伝えて欲しいと思います。この行動で、相談室部門のスタッフも動きやすくなり、医師が懸念する不安を改善するために上手に対応してくれます。
〇在宅医と面談をする
在宅医を早めに探すことも、積極的に動いてほしい準備の一つです。相談員から情報を得ることも良いですし、近所の方の口コミや、地域包括支援センター、ネットなどで調べて、自宅近くの評判の良い先生を早めに見つけることが大切です。
在宅医も、自分が担当できるキャパシティーがあり、受け持ちが多い時はお断りする場合もあります。ですが、計画性をもって病院から在宅への移行期間を持つことで、在宅医のスケジュールが立ちやすくなり、スムーズな在宅医療への切り替えにつながります。
在宅診療所は、事前に家族面談を実施している場合があります。依頼したい在宅医が見つかったら、ご家族自身から主治医に気兼ねせずに在宅診療所に連絡し、相談することをお勧めします。その時の電話の対応や、家族面談で実際に医師と話すことで、ご家族の「家で看取る」覚悟が決まることにもつながります。
〇介護保険の申請、ケアマネージャーを決める
家族が家で看取る決心がついていても、家族だけで24時間患者さんのお世話をすることは予想以上に大変なこともあります。例えば患者さんを抱き起こすだけのことでも、今まで介護経験のない方にとっては自分自身の体に負担がかかってしまい体調を壊す原因にもなりかねません。
介護保険は、入院中に申請し、入院中に実調調査を受けておくと良いと思います。ですが、終末期のがん患者さんの場合には、介護保険の認定が下りるのを待っていると、自宅に帰るタイミングがなくなる場合もあります。その場合には、電動ベッドなどはレンタルなどで対応し、「少しでも早く、家に帰ることが希望です」とはっきりと意思表示をして欲しいと思います。ケアマネージャーさんにも、色々なタイプの方がいます。慎重に事を運びたがる方もいますので、場合によっては、家族が主体的に話を進めることもおすすめです。
〇訪問看護も導入を
在宅医を頼むと同時に、訪問看護の導入も検討していただきたいと思います。特に、在宅に移行した場合には、本人もご家族も、生活のペースがわからず疲弊して「本当に続けられるのだろうか…」と不安がよぎることがあります。
訪問看護師は、患者さんのケアだけでなく、ご家族へのケアや介護全般のアドバイスをしてくれます。また、急に具合が悪くなった時の対処にも相談に乗ってくれます。
訪問看護をどこに依頼するか悩んでいる場合には、在宅医が連携しやすい訪問看護ステーションはどこなのかを質問してみるのも一つの方法です。医師は、自分が連絡しやすい訪問看護ステーションがある場合も多く、スムーズな連携につながることになります。
■「何かあった時」の対処は家族で話し合う
家で看取ると決めていても、想定外のことが起こった場合にどうするか、それは家族の中で気持ちを固めておきます。
例えば、急に痛みが出た、管が抜けた、意識がなくなった、呼吸が弱くなった時、在宅医に切り替えたら、主治医は在宅医です。また、在宅では提供できる医療は限られます。住み慣れた場所で最期を迎えさせてあげたいと思いながらも、不安が残る場合には、十分に在宅医を含めて話しあうことが大切です。患者さんが末期がんの場合には、病院の主治医が勧める緩和ケア病棟の面接を受けておくのも一つの選択です。
緩和ケア病棟の外来を受けたからと言って、すぐに緩和ケア病棟への入院が決まることはありません。在宅にいながら緩和ケア病棟の連絡を待つことも可能ですし、在宅看取りを決心した時点で入院希望をキャンセルすることもできます。様々な状況を柔軟にとらえて、最終的に「安心して家で看取る」決意を固めることが、ご家族にとっても安心につながると思います。
まとめ
家族が在宅を希望するのに、主治医が反対した時は、主治医の意見はアドバイスと考え、安心して在宅に移行できるように相談員や在宅医などとのパイプを強めてほしいと思います。場合によっては、主治医の提案する病院の紹介状を受け取っておくことも良いと思います。
体調が変化した、実際に亡くなった時には、誰もが動揺すると思います。ですが、その動揺は、在宅医や訪問看護師と話し合い、対処方法を確認しあうことで解消できるものです。
不安以上に、自宅での介護だから得られるものがたくさんあるはずです。在宅介護への道を、ご家族自身が積極的に描いて頂けたらと思います。