がんのこと、もっと良く知ろう⑬「放射線治療とは」

がんのこと、もっと良く知ろう⑬「放射線治療とは」

こんにちは。いい病院ネットです。

先日、放射線治療についての相談を受けました。ですが、その方はとても放射線治療のイメージが悪く、しかも正確でない情報を自分で選択しているようでした。それだけ、放射線治療に対する不信感を持っていたのだと思います。放射線治療は、もちろんリスクはありますが、それ以上に治療適応が幅広く、手術ができない方に対しても適応になります。今回は、放射線治療について、ご説明します。

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「放射線治療とは」

■放射線治療は局所療法

日本人は、世界で初めての被爆国のため、精神的な放射線アレルギーがあります。さらに、東日本大震災で、東京電力の原子力発電所事故が加わり、放射線が「全身に与える影響があるもの」というイメージが更に強くなった方もおられます。

ですが、検査や治療で使用する放射線は、放射線量や方向性がコントロールされており、効果は手術と同様に局所に対する反応になります。放射線は、体を通り抜けますが、放射線治療の場合には、どの部分に放射線量(放射線の強さ)がピークになるのかを計算して治療をしています。そのため、皮膚から入り、反対側の皮膚へと放射線は抜けていきますが、その強さは皮膚と治療部位とでは同じではなく、できる限り治療部位だけに高いエネルギーの放射線が当たるようになっています。

手術も、病巣に届くまでには、皮膚や筋肉などを切除しなければなりません。そのため、切除範囲が広くなればその分、機能障害や外見上の問題が起こることになります。放射線治療も同様で、治療計画を医師が立案し、治療部位以外の臓器や組織に起こる有害事象を計算したうえで治療をします。ですが、放射線治療は、手術と違い機能障害や外見上の問題が起こることはほとんどありません。本当は、とても患者さんの体に優しい治療でもあるのです。

■頭頸部腫瘍では欠かせない治療方法のひとつ

頭頸部腫瘍は一般的に、リンパ節転移を起こしやすく、手術を行うことで「話す・食べる・嗅ぐ・視る・聴く」などの機能に障害が起こる場合や、外見上に大きな変化を起こす場合が多いといわれています。

ですが、頭頸部腫瘍は放射線治療に対する感受性が高く、手術・放射線・抗がん剤を上手に組み合わせることで、患者さんの生活の質を維持できる可能性が高くなります。

特に、手術が難しい脳の奥にできた治療に対しても、重粒子線や陽子線治療によって、治療が可能になり、完治も夢ではなくなりました。

確かに20年以上前の放射治療の機械の精度では、有害事象も強く、治療効果も望めなかったのも事実かもしれません。ですが、できる限り腫瘍に的を絞って放射線治療を充てることができる強度変調放射線治療や、画像誘導放射線治療などの出現、陽子線や重粒子線治療の適応拡大によって、治療効果は格段にアップしています。

■放射線治療は当てられる線量が決まっています

安全で確実な治療となった放射線治療ですが、臓器によって照射できる放射線の量が決まっています。それは、ガイドラインにも記載されており、放射線治療医は、その線量を超えないように治療計画を立てています。

そのため、大切な情報の一つに、今までの放射線治療歴が必要になります。

患者さんは、手術や抗がん剤のことは話すのですが、放射線治療を受けたことに介してはあまり自分から話さないことがあるようです。それは、手術や抗がん剤の治療は、治療を行った後の後遺症や副作用が、ご本人の記憶に残りやすいのですが、放射線治療は治療前の不安は強くても、治療そのものに苦痛が少ないためだとも考えられます。

ですが、放射線は線量が決まっており、それ以上の線量をかけてしまうと、治療効果よりも後遺症で患者さんの生活の質を下げてしまうこともあります。ほかの治療と同様に、放射線治療を受けた記録は、しっかりと保管して頂きたいと思います。

■副作用も局所症状

ここで、放射線治療の副作用についてご説明します。放射線治療というと「吐き気」が頭に浮かぶ方が多いと思います。ですが、それは消化管(特に胃・食道・十二指腸)などにかかった場合に限ります。

足や手、乳房などに放射線治療を行っても、吐き気などは出現しませんし、下痢なども起こりません。放射線治療の副作用は、当たっている部位や臓器の起こることを念頭に入れておくと、必要以上に不安になることは少ないと思います。

放射線治療で一番多い副作用は、照射部位にかかる皮膚炎や粘膜炎になります。照射を開始して2週間を過ぎたころから出現し、治療終了後も2~4週間程度は続くことになります。これは、お肌のターンオーバーと同じ期間かかると考えていただければ分かりやすいと思います。

放射線治療中、皮膚障害や粘膜障害が強く出現する場合があります。食道がんや下咽頭がん患者さんは、食事がとれなくなることもあります。ですが、この副作用は治療を終了すると落ち着く副作用であるために、栄養形態やルートを変えるなどで対処することになります。

皮膚炎についても、スキンケアや軟膏などの使用、下着などの選択などを工夫して、皮膚炎を悪化させないように対処します。皮膚炎や粘膜炎は、想定内の副作用ともいえるため、一人で対処せずに、放射線治療室のスタッフに相談してください。不安を抱えたまま、治療を受けることは避けてくださいね。

まとめ

いかがでしたか?今回は全般的な放射線治療についてご説明いたしました。放射線治療は、早期がんであれば完治を望むことの可能であり、症状緩和にも役立っています。次回も、放射線治療について、もう少しご説明したいと思います。よろしくお願いいたします。

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

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