こんにちは。いい病院ネットです。
現在、65歳以上の高齢者の方の中で、認知症およびその予備軍と思われる方の割合は、約4人に1人ともいわれています。65歳といえば、やっと仕事から解放されて、本当の意味で、自分の老後を楽しめる時期でもありますよね。
ですが、平均寿命が延長し、2015年時点での平均寿命は、男性80.79歳、女性87.05歳になっています。つまり、自分の老後を考え始め、自分が認知症の予備軍に入りかけた時、自分の両親が認知症となり介護が必要になる場合も多いということです。
誰もがかかる可能性のある認知症。その時に慌てないために、今回は認知症患者さんが地域で暮らすことについてご説明していきます。
『家族が認知症になったら』
■そもそも認知症とは
認知症とは、何らかの原因で、脳細胞の働きや細胞同士の情報伝達がうまく働かなくなったり、脳細胞自身が死んでしまったために、記憶障害や運動障害などの様々な症状や障害が生じることで、生活に支障が出ている状態が、概ね6か月以上継続していることを指すとされています。
認知症を引き起こす病気として代表的なものは
○変性疾患
○脳血管性認知症
の2つが主なものになります。
「変性疾患」は、アルツハイマー病が有名ですが、他にも前頭・側頭型認知症やレビー小体型認知症などが含まれ、ゆっくりと脳の神経細胞が死んでいくために認知障害が発症するパターンの認知症になります。
「脳血管性認知症」は、いわゆる脳出血や脳梗塞・脳動脈硬化などの脳血管障害が原因となって発症するもので、脳神経や細胞に物理的栄養や酸素が行きわたらずに脳細胞や神経伝達が破壊されたためにおこる認知症になります。
つまり、認知症は、誰もが起こる可能性があるのです。だとしたら、我がこととして、地域で暮らす認知症の方に対する理解を深めることが大切になります。
■どんな症状がおこるのでしょうか?
認知症は、どの部分の脳細胞や神経伝達が障害されたかによっても症状が違ってきます。ですが、物忘れ、記憶力の低下が自覚しやすい症状の一つと思います。
他にも、性格が変わった、今まで好きだった料理や趣味をしなくなった、躓きやすくなり歩行スピードが落ちた、何かに固執するようになった、幻覚が見えるようになった、などがあげられます。
認知症の記憶障害は、本人にとっても不安で苦痛な症状の一つです。また、そのことを隠そうと、相手の話に合わせるなどの行動が、認知症を早期に発見することを阻む要因になります。
認知症は誰もが起こりうる症状であること、認知症を治すことは難しいですが早期に対処することで症状の悪化を防ぐことができることを、普段から家族と話し合って、「認知症」に対する心のブロックを外すことがとても大切です。
■変だなと思ったら、まずは病院へ
物忘れや性格の変化、意欲の低下などがすべて認知症からくる症状ではないことも、知っておくことが大切です。
高齢の方の中には、うつ病が隠れている場合もあります。そのため、記憶力が落ちた、表情が乏しくなった、身なりを気にしなくなった、好きなことをしなくなった、眠れていない様子などがある場合には、「年だから」とそのまま様子を見ずに、家族が付き添って病院を受診し、家族の方の行動や態度の変容が、何の原因から生じているものなのかをきちんと判断してもらうことが大切です。
ほかにも、高齢者の方の場合には、服用しているお薬によっても認知力の低下などが起こることがあります。
ご家族の表情や物忘れの程度、夜の睡眠、食事量に変化が気になった場合には、気になりだした時期や薬の内容、その方がどのように変化したのかを簡単に継時的にメモにした上で、気軽な気持ちで内科やかかりつけ医に相談することをおススメします。小さな変化に気が付くのは、普段の状態を見ているご家族の方の情報です。「なんとなく、変」という直感を信じて、医師や看護師に相談して欲しいと思います。
■認知症と診断された場合には
ご家族が認知症と診断された場合には、そのこと自体を重く受け止める必要はありません。何度もお伝えしているように、認知症は誰でも起こる可能性がある疾患です。大切なことは、ご家族の方の認知症の症状の進行を緩やかにすることになります。
そのためには
○お薬をきちんと服用してもらう
○定期的な受診を継続する
ことももちろん大切です。
ですが、一番は、ご家族が認知症と診断された方への接し方が重要になります。認知症と診断されても、すべての脳が障害されたわけではありません。悲しみや怒り、不安の感情は、原始的な脳の部分でもあるため、物忘れなどを叱った場合には、自分が何かを忘れたことは忘れてしまうのですが、その時叱られた感情は記憶されてしまいます。
そのため、ご家族同士がさらにギクシャクしてしまうきっかけにもなりかねませんので、介護をする側になった場合には、自分の感情のコントロールすることも、とても大切になります。
■認知症の家族の方への接し方のポイントは?
では、日常生活の工夫として、ご家族の方には何ができるのでしょうか。
その対策として
○毎日のスケジュールをできるだけ同じにする
○カレンダーや黒板など視覚で訴える物を活用し、確認することを日課とする
○物の置き場所などを変えない
○「危ないからさせない」「時間がかかるからやってしまう」ではなく、家事などの役割を継続できるように声がけや、その流れを手帳などに書いておく
○自分の感情をそのままストレートにぶつけない
○できたことを当たり前とせず、「ありがとう」と言葉で伝える
などがあります。忙しい時間で、そんなことできないと思われるかもしれません。ですが、自分が自分でなくなる恐怖は、認知症であることを知ったご本人が一番強いといわれています。記憶が一つ一つ失われていく、自分ができることが一つ一つ亡くなっていくその恐怖を、ご家族の方も理解したうえで、接していただけたらと思います。
まとめ
認知症は、早期に発見し、治療や対処をすることで、進行を抑えられるようになりつつあります。まずは、認知症の症状に、一番そばにいるご家族の方が気が付き、そのこと見過ごさない、重く考えすぎずに治療につなげることになります。
そして、ご家族自身も、前とは変わってしまったご家族に対し、怒りや悲しみを抱えてケアをするのではなく、その思いを医療者や同じ認知症の家族を抱える方などに吐き出すことが大切です。現在は、認知症カフェなど、気軽に利用できる場も多くなっています。
変わっていく家族を見ること自体が、支える家族にとって苦しい体験でもあります。一人でその悲しみや苦しみを抱えず、どう対処することで楽になるのかを、地域に住むたくさんの方と関わる中で見つけて欲しいと思います。