がんのこと、もっと良く知ろう⑱「親ががんにかかった時は」

がんのこと、もっと良く知ろう⑱「親ががんにかかった時は」

こんにちは。いい病院ネットです。

離れて暮らす親は、いつまでも元気でいてくれる…。誰もが、目の前にある生活に追われ、いつもそばにいるわけではない親のことは、「変わらないでいてくれるはず」と思いがちです。だからこそ、離れて暮らす親が「がん」と聞かされたときには、信じられない気持ちと、自分が親のそばにいないことの対する罪悪感や焦燥感が沸き上がってきます。

今回は、離れて暮らす親ががんになった時の対応について、ご説明したいと思います。

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「親ががんにかかった時は」

■ショックを受けているのは、ご本人

2人に1人ががんになると言われる時代となっても、がん告知を受けることは精神的な衝撃が大きく、一般的に、気持ちが落ち着き日常生活を送れるまでの精神状態になるまで2週間程度は必要と言われています。それは、「親」という役割がある場合でも同じですし、高齢になればなるほど外的ストレスに弱くなっています。

離れている子供にとって、親はいつまでも「若かった頃の親」の印象に引きずられ、病気の説明が電話などで理解できないときに、きつい口調になってしまうことがあります。それは、「自分が知りたい気持ちに答えてくれない親」に対して、子供として“しっかりして欲しい”気持ちが優先してしまうためでもあります。

ですが、がんを告知されたショックから立ち直っているかどうかは、電話などでは見えませんし、インターネットなどから簡単に情報を得られる自分たち世代とは違います。まずは、親から「がんと言われた」と知らされた時は、親の気持ちを受け止めて、今後のスケジュールがどうなるのかを確認するように心がけて欲しいと思います。

がんにかかった親である本人が、一番動揺し、不安定な今を体験しています。子供であるあなた自身は、まずは落ち着いて「今の状況」を受け止めるようにしてください。

■「病名を伝えること」は治療上に必要なことの一つ

今でも、「家族よりも先に本人にがんだと伝えるなんて」と憤慨するご家族がいます。ですが、ご本人に理解力があり、治療に耐えられる場合には、たとえ80歳、90歳であってもがんであることをご本人にお伝えすることが殆どです。

がん治療を行う場合には、本人ががんであること知っていることが前提で行われます。以前は未告知で治療をすることも可能でしたが、抗がん剤や放射線治療などの集学的治療を受ける場合、治療による副作用を乗り越え、セルフケアを行うためにはご本人自身の協力が不可欠です。

また、がんがコントロールできず、徐々に痛みや倦怠感、浮腫や体重減少などが出現してきた時などに、「がんではないのか?」「死ぬのか?」と患者さんに直接聞かれるご家族が、嘘をつくことに耐え切れなくなることもあります。

「病名を伝えること」は、ショックは受けますが、サポートがあれば対応できるものです。それよりも、病名を言わない選択をして、ご本人が「嘘をつかれた」と思われることのほうが治療効果や家族関係に大きな影響を与える場合もあります。親にも、未来の予定があったはずです。ご本人が未来を自分で考えるためにも、「告知をする・しない」にこだわることよりも、一緒に未来を考えることに時間を費やして頂ければと思います。

■電話だけでなく、できるだけ会いに行く

離れていると、電話で声を聴いて親の体調を判断したくなると思います。ですが、電話の声は、無理して元気な声を出している場合も多いものです。それは、病院でもよく見られる光景で、患者さんは医療者には「元気である」ことをアピールしようとする傾向があります。

治療が落ち着くまでは、できるだけ顔を見に行く時間を作るように心がけてください。また、がん治療には効果判定をするためのCTなどの検査を定期的に行います。その検査結果を一緒に確認できるときは、診察に同席したり、検査結果を一緒に確認したりしていただければと思います。

親は、子供に心配かけたくないと思いがちです。そのため、「大丈夫だから。心配ないから」と、体調や病状について隠してしまうことが多く、病状が悪化した際に「聞いてなかった」と戸惑うご家族の方も多いのです。

親ががんになったときは、家族力を再強化できる機会でもあります。当たり前の日常に慣れてしまい、親だけ、自分の家族だけ、で出来上がりつつあった生活に“共有する時間や場所を作る”ことで、家族が今までとは違う形で関わるチャンスだと捉えて頂ければと思います。

■大切なのは、親の気持ち

親の住んでいる場所が離れていればいるほど、自分の地域での対処を、親に求めがちになる場合があります。

ですが、首都圏に住んでいる場合と、交通網が少なく病院も限られる地域に住む方とでは、治療を受ける方法も変わっています。

最先端のがん治療を受けるための離れた病院にかかるよりも、顔見知りの先生に最期までかかりたいと希望する方もいます。

まずは、あなたが調べた情報と、親の今の病状と、そして親の気持ちを確認したうえで、本人が希望する最良の方法を話し合ってください。子供が一生懸命調べてくれた治療法を、親は「せっかく調べてくれたからね」と、本当は体がつらくても受け入れようとすることもあります。

大切なのは、親の気持ちです。あなたの思いを伝え、話し合いつつ、親の思いを可能な限り優先していただきたいと思います。場合によっては、親の希望かなわないこともあると思います。あなたの希望が、親に受け入れてもらえないこともあると思います。ですが、“話し合った事実がある”ことは、親にとっても、あなたにとっても大切なプロセスになります。

■あなたのサポーターを、作りましょう

あなたが、親を支える立場をとる時は、あなた自身のつらさや不安を話す場所を作ることも大切です。

手術で完治できるがんであるなら、術後の体力の回復を見届けることで、あなた自身も安定してきます。

ですが、がんは転移や再発を起こす場合も多く、高齢である親を支えつつ、長期間がんに対する不安を抱え続けることは、家族にとっても精神的に苦しくなりがちです。

今は、家族ケアを行っている病院や、患者会なども増えていますし、カウンセリングを受けることも可能です。また、ご兄弟と気持ちを共有しあう、家族や友人に気持ちを聞いてもらうことで、あなた自身が精神的に安定した状態でいられるように心がけて下さい。

まとめ

自分の親ががんにかかる時、当たり前の日常が当たり前でないことに気づかされます。同時に、自分が甘えられる対象であった親の、弱っている姿を見ることでもあります。

一人で頑張らず、親の気持ちに寄り添いつつ、自分のつらさもしっかりと吐き出してください。あなたが誰かに支えられていることも、親にとっては安心につながります。一人で頑張ろうとしすぎないで欲しいと思います。

ライター:村松真実(がん看護専門看護師)

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