もっと知って欲しい!乳がんのこと③

もっと知って欲しい!乳がんのこと③

こんにちは。いい病院ネットです。

日本女性が一番かかる可能性の高いがん―乳がん。ですが、自分がかかるとは思っていない方が殆どです。高血圧や心臓病、糖尿病よりもかかりにくい病気と思われているがんに、自分がかかるはずはないと、考える方が当然と思われて当然ですよね。

ですが、自分には関係ないと言い切れない病気ががん。自分以外の友人や親せき、家族がかかる可能性だってあるのです。今回は、乳がんと診断された時にチェックしてほしいポイントについてご説明します。
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■乳がんの標準治療って何?

現在のがん治療は、ガイドラインに基づいて行われています。標準治療は、現在で最良の治療法と言われ、科学的根拠に基づく治療になります。

よく、最先端の治療と標準治療を混同してしまう場合もあります。ですが、最先端の治療のすべてが科学的根拠のはっきりしているとは限りません。先進医療として扱われているものもあれば、研究レベルのものもあります。「新しい治療が受けたい」と飛びつく前に、今の標準治療に何があるかをしっかりと知ることが大切です。

乳がん治療は、いくつかの治療を組み合わせた「集学的治療」が標準治療になります。いくつかの治療とは

〇外科的手術
〇抗がん剤治療
〇放射線治療
〇ホルモン治療

になります。この治療を、患者さんの乳がんの病期(ステージ)、サブタイプ、年齢、合併症の有無、患者さんの希望などを考慮して、選択していきます。

では、自分ががんになったとき、提示された治療を、どのように選択したらよいのでしょうか。

■治療を選択するときの注意点は?

がんと診断された時、多くの患者さんが「家に帰ってから泣いた」「告知された後の説明は、あまり頭に入らなかった」と話しています。

がんと言われて頭をよぎることは
・家族に迷惑がかかる
・お金をどうしよう
・仕事を休めない
・子供を誰に預けよう
・がんって私、何も悪いことをしていない
・助からないの?

など、未来の不安が次々と頭をよぎることが多いようです。そのため、まずは告知から治療選択をするまでに行うことは

〇病名や治療方針などを記載した説明用紙を医師に書いてもらう
〇自分一人でなく、家族にも同席してもらう
〇がん相談支援センターなどで、知りたい情報をもらう
〇「がん情報センター」(乳がん:http://ganjoho.jp/public/cancer/breast/index.html)や、「日本乳がん学会患者さんのための乳がん診療ガイドライン」(http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/)などから情報を得る

などを行って、今の自分の状況をある程度正確に把握するようにします。場合によっては、進行がんの場合であることでショックを受けることもあるかもしれません。ですが、乳がんの場合には、「転移がある=治療法がない」ということではなく、様々な治療法が標準治療の中でもあります。まずは、逸る気持ちを抑えて、情報を集めてほしいと思います。

この時に重要なポイントが一つあります。

それは、
〇乳がん患者さんのブログを、ネットサーフィンしすぎない
〇出典元がはっきりしないサイトの記事に飛びつかない
〇100%治る、切らないで治るという言葉だけを探さない
〇良いことだけを書いてある記事をうのみにしない

ことです。

がん治療は、がんだけを取り除くことはできず、手術でもがんよりも大きく組織を切り取ったり、近くにあるリンパ節を取り除いたりする必要があります。そこが、良性疾患と違うところです。また、お薬も、悪い細胞だけでなく、正常細胞に対しても、影響を及ぼしてしまいます。

それは、がん細胞は、正常細胞から徐々に変化したためです。がん細胞は、突然生まれるというよりも、正常な細胞をコピー(分裂)している中で、さまざまな要因が加わり、正常な細胞から、数年から数十年かけてがん細胞へと変化していきます。そのため、がん細胞といっても、正常細胞と同じ性質も持っているのです。そのため、がんと正常の境界線はわかりにくく、お薬も正常細胞に対してダメージを与えてしまうことになります。

〇できるだけ、小さな傷で
〇できるだけ、副作用がないお薬で

と誰もが願う治療が、がん治療ではまだまだ難しいこともあります。そのため、「支持療法」と呼ばれるケアや治療があるのです。耳寄りな情報は、とても魅力的ですが、まずは標準治療が何かを抑えてから、いろいろと疑問を書き出し、一つ一つ解決していくことが迷わない方法になると思います。

また、私もSNSでの情報発信をする中で、いろいろな「がん情報サイト」をチェックしています。その中には、医療者ではない人がまとめた情報サイトも多く存在します。そのため、余計患者さんたちを混乱させてしまう原因になっているように感じています。

乳がん患者さんのブログも同様です。患者さんのブログは、勇気を与えてくれますし、健康な人には分からない辛さを共有できると思います。ですが、ブログは、その方の個人的体験でしかなく、発信者が元気がない時やブログが更新されないだけで、受信者は不安を抱いてしまうことも多いのです。

がん相談に見える患者さんから受ける相談の中に、「気になってブログを見ているうちに、よけいに不安になって…」という声が多いのも事実です。いつでも、情報を得ることができるSNSですが、自分の治療方法がまだよく理解できないときには、「気になってみてしまう」ことはやめて、今一般的に行われている治療を知ることから初めてほしいと思います。ブログを読むのは、それからでも遅くはありません。

■セカンドオピニオンを受ける

主治医となる先生を信用して、診断を受けた場所で治療を受けることも一つの選択です。ですが、ご家族の中で意見が分かれる、自分も今一つ治療選択に不安がある、そんな時には、一度はセカンドオピニオンを受けることもおすすめします。

がんは、慢性疾患です。特に乳がん治療は、今や10年のフォローが必要といわれている疾患です。最初手術をした主治医の先生が、ずっと継続してみてくれるとは限りませんし、一つの病院の診断だけでなく、がん専門病院の医師の見立てを受けてみることで、不安が解消することもあります。

セカンドオピニオンを受けるときのポイントは、

〇自分たちで病院を探し、主治医から紹介状をもらって自分たちで予約する
〇セカンドオピニオンは自費診療で、時間も決まっている
〇あくまでも意見を聞くためのもの、転院ではない
〇何か所も受けて、治療の機会を逃さない

ことです。
保険診療でもなく、かかった時間だけ料金がかかることを踏まえて、セカンドオピニオンを受ける前には、聞きたいことをメモ書きしておくことが効率よく時間を使えることになります。

セカンドオピニオンを行っている病院を知りたい時にも、がん相談支援センターや、がん情報サービスなどう利用するとよいと思います。

また、セカンドオピニオンを何か所も回る患者さんもおられます。その多くの方は、「診断が間違っていると言ってほしい」「自分の考えを受け止めてほしい」という気持ちが、セカンドオピニオン探しにつながっていることもあります。ですが、セカンドオピニオン探しや、病院巡りを繰り返すことが、治療開始時期を遅くすることにもつながりますので注意してくださいね。

がん相談を行うと、この治療選択の場で相談に来られる方が殆どです。医師の説明だけでは、わかりにくいときは、相談室を上手に活用してくださいね。

次回から、手術などの治療とケアについてご説明します。よろしくお願い致します。

ライター:村松まみ(がん看護専門看護師)

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