もっと知って欲しい!乳がんのこと⑨

もっと知って欲しい!乳がんのこと⑨

こんにちは。いい病院ネットです。

がん治療の難しさは、がんの再発・再燃を受け止め、治療を再開することだと思います。多くの患者さんが、初発のがん告知よりも、再発を知らされた時の心の動揺が大きかったと話されます。がんを治すために頑張ってきた思いと、医師を信頼して頑張ってきた気持ちを裏切られたように感じ、その狭間で心が大きく揺れてしまうからだと思います。

今回は、乳がんが再発した時の対処の仕方などについてご説明します。

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『乳がんが再発したら』

■今の体の状態を記録でもらう

乳がんの多くの患者さんは、お一人で外来通院時に再発の可能性や、再発したことを告げられます。その事実の重さで、その後の医師の説明は頭に入らないことがほとんどです。

そのため、医師の説明をきちんと文書でもらうことをお勧めします。医師によっては、その後の診療が多いからと嫌がる場合もあると思います。そんな時は、簡単に病状を書いてもらい、後日、きちんと説明を聞く日程を取ってほしいと提案するようにしてください。

医師の言葉を、家族に説明することも、患者さんにとってはつらい作業です。また、家族の動揺を、患者さん自身が受けることで心が更に傷つくこともあります。ですが、医師の簡単ではあっても説明文書があるだけで、お互いが「説明書」という客観的資料を通して距離をとることもできます。

まずは、患者さんに生じた変化について、医師から説明文書をもらいましょう。そして、告知を受けたその日は、不安のあまりにたくさんの情報を得ようとせずに、家族や友人、相談室のスタッフなどに、自分の思いを受け止めてもらうことを優先して欲しいと思います。

■自分を責めない、そして主治医との関係性を保つ

がんが再発すると、「自分のせいでまた迷惑が掛かる」「自分が悪かったから」と自分を責める方もいらっしゃいます。闘病生活を支えてくれた家族や友人に対し、更に自分のことで負担をかけてしまうことへの自責の念が生じてしまうのだと思います。

ですが、病気が再発したことは、患者さんのせいではなく、がん細胞の性質であったり勢いであったり、様々な要因が重なりあった結果です。また、家族の誰かに病気が発症することは、誰にも可能性があることです。自分だけを責める必要はないですし、自分がやれる範囲で家族にできることを今まで通りに行うことをまずは優先して考えてみてはいかがでしょうか。

また、思いもよらぬ時期に再発を告げられた時、主治医への信頼感が揺らぐことがあります。「先生が冷たかった」「信じていたのに裏切られた」そんな言葉を口にする患者さんやご家族の方もおられます。

頑張って手術や治療を乗り越え、やっと自分の生活が軌道に乗った矢先での再発や、提示された治療の途中での再燃や、5年以上経過した後での再発の場合には、怒りや悲しみ、揺らぎが大きく、主治医をはじめ医療者を信じられなくなるほど心のダメージを受けることもあると思います。

ですが、医師の「先生が冷たかった」と感じた時、医師も残念に思っていた気持ちを隠しての表情だった可能性があることも心に留め置いて頂けたらと思います。

主治医となった医師は、自分の患者さんに対して、今の最良の治療法を行ったと思っています。ですが、がん治療は難しく、5年・10年経過した後で再発することや、HER2たんぱくやホルモンレセプター、がん細胞のタイプなどを確認して治療を選んでも、がんの活動性が強く抑えきれない場合もあります。

患者さんの再発は、主治医にとっても、他の医療者にとっても、患者さんがショックを受けることが理解できるだけにつらい事実です。その思いがわかるからこそ、事務的に淡々と説明してしまう医師の態度があるかもしれないと考えて欲しいと思います。

なぜ、その話をするかといいますと、再発を告知された時の記憶はとてもつらい記憶になりがちです。そのため、その辛い記憶を思い出すとき、医師の表情や態度で受けた感情も一緒に思い出されてしまうため、医師への不信感が消せなくなってしまうためです。

医師をかばうわけではありませんが、その時の表情や説明の仕方に縛られてしまい、今までのあなたの情報を一番知っている医師との関係が崩れてしまうことは、今後の治療選択で損をしてしまうこともあります。

告知時に傷ついた思いは、相談室などのスタッフに吐き出して欲しいと思います。また、どうしても怒りが収まらない、気持ちが落ち込むときは、カウンセリングを受ける、心療内科を受診するなどもおすすめします。自分のつらさを吐き出し切った上で、これからのことを一緒に考えてくれる誰かを見つけることはとても大切なことです。

■セカンドオピニオンを受ける時は

再発を受け、次の治療を提示された場合には、セカンドオピニオンを受けることをお勧めします。特に、主治医に対し、気持ちの上で不信感が消えない場合には、他の医師の説明を聞くことはとても大切なことだと思います。自分が受ける治療が最良の治療であることを、他の医師の目でチェックしてもらうことで、納得できる部分が増えると思います。

ですが、「なぜ、再発したのか」「自分が受けたい治療は他にあるはず」など、自分が納得できる答えを探すためにセカンドオピニオンを受けることは、お勧めできない面もあります。納得できない気持ち、再発していないといってもらいたい気持ちをもって、第3者の方の意見を探し求めてしまい、治療開始が遅くなってしまうこともあります。

セカンドオピニオンを受ける時は、何を知りたくてセカンドオピニオンを受けるのか、そしてセカンドオピニオンを受ける病院は本当に、最良の医療を知った医師であるのかを把握してから受診して欲しいと思います。

がん治療で言われる最良の医療とは、ガイドラインに沿った医療です。その治療を把握したうえでの最新医療である先進医療などがあります。先進医療=最良の医療ではないことを十分理解したうえで、セカンドオピニオンを受ける病院を選んでほしいと思います。

がん情報サービス:カンドオピニオン、紹介状Q&A

■仲間とつながる

再発した患者さんから聞かれる言葉なのですが、「再発した後は、患者会に出るのがつらい」という言葉です。患者会やがんサロンでは、がん治療が始まったばかりの方が、情報を求めて出席する場合も多くあります。

そのため、再発しつらい思いを抱えた患者さんは、自分の思いを話すことができなくなるようです。

ですが、気持ちのつらさを吐く出すことは大切ですし、分かり合える相手がいるから次の治療のステップに進めることもあります。

今までの患者会に出席する気持ちになれないとき、近くに他の患者会はないかどうかを相談室に聞いてみるのもよいと思いますし、各地で開催されている「がん哲学外来」に出席することもおすすめです。

自分が居心地の良い場所、心が安らぐ場所をできるだけ多くの持つことが、再発して心が傷ついた時の支えとなります。

<参考になるHP>
認定NPO法人J.POSH
全国の乳がん患者会一覧表
がん哲学外来
マギーズ東京

まとめ

今回は、再発したときの対処についてご説明しました。どの場所に再発したかによって、治療法も違ってきますし、治療効果も個人差が大きいことががん治療の特徴です。

治療を受ける前、そして治療を選択した時、それだけ心の支えを得て、不安を小さくできているかが、これからの治療を受けるときの気持ちに影響していきます。

主治医への不満、治療への不安、家族への思いなど、相談室や患者会、カウンセラーなどに吐き出して、自分を抑えることなく、一歩を踏み出してほしいと思います。

ライター:村松真実(がん看護専門看護師)

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