ケガは色々な場所、状況で不意におとずれます。全てのケガの対処法をお話しするのはなかなか難しいのですが、最低限知っておくとよいと思う事をお話しします。
なお、ここでは意識障害や心肺停止および呼吸停止などの重大な対処法については、簡単に触れる程度にして主にケガの対処法をお話しします。
キズに関する豆知識を見る(日本創傷外科学会のHPへ)
ケガの原因はほとんど事故です。
その原因には、何かにぶつかる(交通事故など)、何かで切れる(料理中やカッターなどで作業中など)、転落・転倒する(階段をふみはずす、道路で転ぶなど)、やけどする(火事、熱いものを触る、熱湯がかかる、化学物質に触れる、感電するなど)など、さまざまなものがあります。
自分自身、または周りの人がそのような事故にあった場合、どうしてもあわててしまいます。落ち着いて冷静になり、まずはどうすればよいかを順番に考えましょう。
特に転落や交通事故で頭部を打撲していたり首に負担がかかったりすると、脳や脊髄に障害を起こしている可能性があります。
特に意識があまりない場合は、むやみに体を揺すって東部や頸部(首)を動かさないようにしましょう。
また呼吸をしているか、脈は触れるかなどもみてみましょう。呼吸がなかったり脈が触れない(心臓が動いていない)場合は人命にかかわりますので、人口呼吸や心臓マッサージを行うこと、また近くにAEDがあればそれを使うなどの対処をすることが必要です。
一般の方には難しいと思いますが、できれば行政などが行う講習を受けてこのような事態に備えていただければと考えます。
また高齢の方が道路などで転んでしまうと、ふとももの骨折を起こすことがよくあります。 その場合無理に立つことはできませんのでその場で安静にするのがよいでしょう。
いずれにしてもすぐに救急車を呼びましょう。
皮膚が切れると、その部の血管が切れて出血します。
特に頭や顔は血流がよいので、出血量が多い割にはキズは小さいということがよくあります。 まずは出血しているキズをガーゼやハンカチもしくはタオルなどきれいなもので覆い、その上から強く圧迫してみてください。5-10分程度圧迫し続けることで、大半のキズはとりあえず出血が止まります。圧迫を続けながら近くの医療機関を受診してください。
大きい血管が切れている場合は圧迫をやめると出続けることがあるので、その時は医師の診療を受けるまで圧迫を続けてください。
よく手足の出血の場合はその根元を縛るとよいと言われますが、縛る時間が長いと手足全体に血が流れなくなり、かえって良くない場合があります。まずはキズの上から圧迫して止血を試み、それでもダメな場合は根元を縛ってみましょう。縛る時間は一般的には1時間以内にすべきです。
その間に救急車を呼ぶか、近くの病院へ行ってください。
ケガをしたところが切れていなくても、多少は腫れます。
ただかなり腫れてくるとその下の骨が折れている可能性があります。
また鼻の骨が折れた場合は、鼻血がでることがほとんどです。
体重がかからない場所であれば動いてもあまり問題になりませんが、体重がかかる場所であればその場から動かず、救急車を呼びましょう。
大したケガではないと思われる浅いスリキズでも、例えばアスファルトでケガをするとアスファルトの粒子が皮膚の中に入り込み、あとで入れ墨のような黒い点や線が入ることがあります。キズが治ってからその治療をするのは結構大変です。ケガが新しいうちにできるだけキズを洗ったり、場合によっては局所麻酔をして粒子を除去したりします。
また切れているキズの場合できるだけ早く縫合したほうが感染のリスクを減らすことができます。
時々ケガをして数日経って受診される方がおられますが、すでにキズに感染が生じており、縫合できずに外用薬などで時間をかけて治すことしかできない場合があります。
そのような場合はキズあとが縫合するより目立ってしまいますので、できるだけ早く近くの医療機関でみてもらったほうがよいでしょう。
当然、きれいで浅いスリキズは自宅での処置でも十分に治ります。
しかし、一般の方にキズの状態を判断するのは難しいので、少しでも迷ったらまずは医療機関を受診することが重要です。
残念ながら形成外科医は他科の医師に比べて数が少なく、大学病院でも形成外科がない所がまだあります。また一般病院で形成外科が既ににある施設でも形成外科医の数は少なく、特に夜間帯での対応が難しいのが現状です。
その場合はまずは一般的な医療機関で対処を行ってもらい、その後形成外科を受診するのもよいと思います。
なお一度縫合を受け、我々形成外科医が再縫合をしたほうがよいと思われるようなキズは、以前はかなりありました。しかし、最近では他の科の先生もかなり細かくきれいに縫うようになり、その数は減りました。
たとえ形成外科医が縫合しても、ケガの状態によってはキズあとが目立つ場合があります。特にキズが治った直後はしばらく赤く、一時的に腫れたり硬くなったりします。キズ自体が治ったとしても、皮膚の中や皮下ではキズを治す細胞がまだ働いています。
ケガをして3-4ヶ月後くらいには、キズが治った時期よりかえって赤身が強くなったり、時には痛みを感じたりする時期(炎症期)があります。
これらの炎症がおさまるのは、だいたいキズが治ってから半年以上経ってからです。
我々形成外科にキズあと治療の目的で受診される方にもこのようなお話をし、たとえ修正手術が必要な場合でも一般的にはキズが治って半年以上(炎症がおさまるまで)は待っていただくようにしています。その間は絆創膏などでの保護や日焼け防止の指導を行い、場合によってはケロイド予防の内服薬を処方するなどの対処をしています。
キズあとを完全に消すことはできませんが、より目立たなくすることは可能です。
ケガが治ってからでもキズあとが気になる場合は形成外科医に是非相談してください。